第18章 休日と音柱 *
私だけじゃなく実弥さんからも声が漏れる。
「……ンッ……ハァッ…」
何度も角度を変えては、口内を犯し続けられ、終わる気配はない。何とかそれに応え続ける。
「…ンッ…」
息が続かず、何度も離れようよ試みるが、がっちりと右手で固定されており、無駄な抵抗に終わる。
頭には靄がかかり、酸欠によるものなのか、快楽によるものなのか、もはや分からない。ただ、欲のままに唇を貪り続ける。
どれくらい口づけをしていたのだろう。
やっと後頭部の拘束が解かれ、それと共にゆっくりと唇が離れていく。
深呼吸をすれば、ぼんやりとした頭がスッキリとしてくる。目の前の実弥さんを見れば、口づけの名残がハッキリ分かるくらい、テラテラと艶かしく輝く。
「…ッ!」
冷静になり、今までしていた事を改めて自覚し、顔から火が噴きそうになる。急に恥ずかしくなり、両手で口を隠す。自分の唇にも名残があり、更に恥ずかしさが増す。
「何してるんですか、実弥さん」
何とか声を絞り出す。
「口づけってのは、こんなに気持ちがいいんだなァ」
実弥さんがボソッと呟いた。
「はっ?」
「もう一回するかァ?減るもんじゃねえんだろォ」
こちらを見ながら、ニヤリと笑う。
「減りはしませんけど…しませんッ!実弥さん、そんな性格でしたっけ?それより、口づけが気持ちがいいって…他の女性とは口づけしたことなかったんですか?」
「いや、あるが…」
「恋仲の女性でしょ?その人とも同じようにしたんだったら、もっと気持ち良かったんじゃないですか?」
「…」
先程の勢いは何処へやら。何故か無言で顔を反らす。
「実弥さん?」
反らした顔を覗き込む。
「…恋仲じゃねえ」
「ん?じゃあ遊郭とかのお姉さんとかですか?」
「…あぁ」
ばつが悪そうに返事をする。そんなに気にすることではないと思うんだけど。
「遊女のお姉さんとしても気持ちいいと思いますけどね。でも、実弥さんもそんなところに行くんですね。知らなかったです。私が気づかなかっただけなんですね」
「勘違いすんなァ!今は行ってねぇ!」
「ん?じゃ、若気の至り?いや、実弥さん、充分若いですよね」
「昔、兄弟子に連れて行かれたんだよッ!」
兄弟子…粂野匡近さんの事だろう。