第18章 休日と音柱 *
「さっきの上書きですよ。天元さんに口づけをされたでしょ?されたのはもう仕方ないし、まぁ減るものでもないし、いいんですけど。何となく嫌だなぁって気持ちが残ってるので、上書きしました」
両手は実弥さんのモノを包み込んだままだ。
「それの方が嫌じゃねえのかァ?」
訳が分からないと言った顔をしている気がする。
天元さんが嫌と言う訳ではないが、イメージはがた落ちだ。何だかんだで、この身体としては、ファーストキスになるだろう。
「実弥さんのだから、いいんですよ。これで天元さんの記憶は上書きできました」
まぁ気にする年齢でもないのけど、思い出すなら実弥さんがいいのだ。だけど、これは完全な自己満足だ。
「ごめんね、嫌だったよね。今から気持ちよくしてあげるから」
実弥さんのモノに話しかけ、ゆっくりと包み込んでいる手を上下に動かし始める。
「…こいつに何で謝る?お前が謝る事はなにもしてねぇだろォ」
「私の口づけは嫌かなと。しかも無理やり奪いましたし。ハハッ。まぁ、でも今から食べちゃうんですけどね」
言ってる事はおかしいが、正直な気持ちだ。
「…ったく、何なんだよ、お前はァ」
そう聞こえたと思うと、実弥さんの手が伸び私の顎を捕える。驚きビクッと肩が揺れる。
「さね…」
口が何かに塞がれ、途中で終わる。
目の前に実弥さんの顔がある。いつもの目の前ってもんじゃない。
何が起こったか全く分からないまま、ゆっくりと塞がれていた口が自由になった。
そこでやっと理解した。
実弥さんとキスしていた。
そう自覚すると、みるみるうちに、顔が熱くなる。
「せめてこっちで上書きしろォ。嫌かァ?」
顎クイされたまま、ニヤリと笑う実弥さんは今までで一番カッコいい。
更に顔が赤くなり、激しい動悸に襲われる。
許容範囲を越え声が出ず、何とか顔を振り、意思表示する。
それを見てふっと笑いながら、顎から手が離れ、元の距離に戻る。
あまりの衝撃で声が出ない。頭の中もパニックだ。
「面白いなァ」
悪戯っぽく笑う実弥さんは、どう見ても私の反応を見て楽しんでいる。