第18章 休日と音柱 *
「何なんだよ、宇髄もノブも、話についていけねェ」
ふいっと顔を背けながら呟く実弥さんは、どことなく拗ねた子どものようだ。
「そうですか?」
一度落ち着いて、聞き返す。
「宇髄と話すノブは、俺が知ってるいつものノブと違ったし、お館さまとの関係も知らなかった」
顔は背けたままだが、案外素直に気持ちを吐露する。
まだ酔いは覚めていないようだ。
「私は私ですよ、実弥さん。まぁ、流石に天元さんの相手は疲れて、最後の方は若干苛つきましたね。何でしょうね、あの話を聞かない感じは。実弥さんの嫁じゃないのは分かって貰えたのに。記憶の事、秘密にしなかった方が良かったですかね?」
「いや、あまり言わない方がいい。だけど、宇髄もなんであんなに拘ったんだろうなァ」
両手を少しだけ後ろにつき、背けた顔を上に向けながら考えている。
「実弥さんが知ってるのに、自分が知らないからじゃないですか?もう、天元さんの話題はこれ位にしときましょ。せっかく気持ちよく起きたのに、疲れました」
「はっ!違いねぇ」
軽く鼻で笑う。機嫌は治ったようだ。
「じゃあ実弥さん、続きしてもいいですか?」
「はっ?」
「気分転換です」
「誰のだァ?」
「私のです」
「何なんだよ、お前は。無理してやらなくていいんだァ」
そればっかりだから、流石に実弥さんは呆れているだろう。
「無理してないですよ。本当です。私がしたいと思ってしてるんですから、実弥さんは何にも気にしなくていいんですよ。
天元さんとのやり取り見てましたよね?本当に嫌だったら、ちゃんと嫌って言いますから、私。
実弥さんが気持ちよくなって貰えれば、それで私は嬉しいんですから。だから、いいですよね?」
「…」
「いいですよね?実弥さん」
「…本当にいいのかァ?」
「もう。いいって、何度も言ってるじゃないですか。そういう優しい実弥さんが大好きですよ」
さっきまでの天元さんに向けた笑顔とは違う。何も含みもない笑顔だ。実弥さんにそれが伝わったかは分からないけど。