第18章 休日と音柱 *
「いえいえ、そんなことないですよ。私よりお館さまの笑顔の方が何倍も怖いですから」
「…」
「悪戯っ子ですしね、お館さま。あ、実弥さん、これは悪口じゃないですからね」
「…」
「二人とも喋ってくれないと、寂しいんですけど」
実弥さんはともかく、天元さんまで無言になる。
なかなか珍しい光景だけど、さすがに一人で話続けるには限度ってものがある。
それだけお館さまの存在は大きいのだろう。まぁ、そんなお館さまに対して、私が友達感覚で話していることが、衝撃なのかもしれない。
「分かった、ノブ。俺のところに来いとはもう言わない。だが、一度くらいは遊びに来いよ。甘露寺くらいだろ?話ができるのは。うちの嫁達とも話が合うと思うし、嫁達も気に入ると思うしな」
流石に諦めてくれたようだ。
満面の笑みにはほど遠いが、話をしてくれただけでもよしとしよう。
話が合うかは分からないけど、鬼滅の刃ファンとしては、お嫁さん達に会ってみたい。すごくキレイでスタイル良くて、そして強いお嫁さん達だもの。
「そうですね。一度天元さんのお嫁さんにもお会いしたいですし、いつか遊びに行かせて頂きますね」
「おう。そうしろ、そうしろ。温泉にも連れてってやるしな」
「温泉!いいですね」
温泉!懐かしい響き。
「不死川も一緒に来てもいいぞ」
「…」
天元さんはニヤニヤしながら、実弥さんにも話をふるが、眉間に皺を寄せたまま無言を貫いている。
本人は行く気はないだろうが、せっかく行くなら実弥さんと一緒がいい。
「温泉なら、実弥さんも一緒に行きましょうよ」
浴衣の袖を引っ張りながら、実弥さんも誘えば、嫌々ながらだろうが、返事をしてくれた。
「…考えとく」
実弥さんが否定しないと言うことは、肯定と取っていいだろう。
「楽しみですね~。実弥さん、一緒に入ります?」
「入るかッ!」
眉間に皺を寄せ、吐き捨てられる。実弥さんらしさが戻り、何だか落ち着く。
「あら実弥さんと一緒に入りたかったのに。いやいや、冗談ですよ」
視線だけで殺せるんじゃないかと思う位の殺気が出現し、すぐに訂正する。
「嫌なら俺が入ってやるさ。おっと、お邪魔のようだな。俺は帰る。じゃあな、不死川、ノブ」
そう天元さんの声が聞こえ振り返ると、もう姿はなかった。流石、柱だ。