第4章 お館さま
「ではノブはあまねと一緒に行ってくれるかい」
襖が開き、あまね様が現れる。本物のあまね様は思っていた以上にとてもきれいな人だった。
あまね様に案内されて、ある部屋に入る。
そこには姿見があった。小走りで駆け寄り、覗き込んだ。
そこに写し出された自分の姿に息を呑む。
若い!どう見ても若い。
二十歳そこそこだろう。昨日の実弥さんが言っていたことが正しい。
もしかしたら、とは思っていたが、実際に目にすると衝撃でしかない。
ひたすら無言で鏡を見続ける私に、あまね様が声をかける。
「着替えなどを準備しましたので、お持ちください。他にも必要なものがあれば、言って下さいね。いつでも準備します。それと、女性特有の悩みなどは、直接私に相談してもらって構いませんから」
優しい言葉に涙が出そうになる。
「ありがとうございます!早速ですが、ちょっとお聞きしていいですか…」
昨日疑問に思った下着のことや生理のこと、服装などについて尋ねてみると、それはこうだと分かりやすく説明してくれる。
「それらの物も準備しましょうね」
良くできた奥方様だ!その後もあまね様に疑問に思ったことや分からないことを聞いていた。
その頃、お館さまと実弥さんも二人で話をしていた。
「お館さま、なぜノブはうちの屋敷に置く必要があるのですか?」
「実弥、ノブには話したけど、ノブは鬼舞辻に狙われる可能性がある。正確にはノブの記憶が、だ」
「ノブが記憶している未来のこと、ですか」
「そう。その記憶が鬼舞辻に流れることは、鬼殺隊にとって致命傷になりかねない」
「どんな記憶か、具体的には教えて頂けないのでしょうか」
「それはいくら実弥でもできない。知っている者はできるだけ少ない方がいいからね。でも、ノブが信じる人間には話していいと伝えている。自分の命がかかっている記憶を話せるに値する人間にはね。実弥にはいつかノブから話してくれる日がくると思うよ」
「……そんなことは天地がひっくり返ってもありません」
「そうかな。可能性は否定しないでおこう。とにかく、そういう状況だから、ノブを柱である実弥に頼みたいんだ。ノブのことは気を付けて見ておいて欲しい。くれぐれも頼むよ、実弥」
「…御意」