第17章 休日と音柱
「そっか」
何だかどうしようもない気持ちが溢れ、実弥さんの左肩の辺りに、ポスッと額をくっつける。
だけど、やっぱり、実弥さんも幸せになって欲しい。全部終わった後に、一緒に生きたいと思う人が現れて、幸せになるのは分かっている。
だけど、玄弥くんを始め、たくさんの大切な人達を亡くした後だし、痣の時間制限もある。
私が何度言っても実弥さんは頑なだから、素敵な女性との恋愛は、全てが終わった後しか考えられないのだろう。そんな事に現を抜かすより、鬼を殺す事が、無惨を倒すことが絶対なのだ。
だけど、玄弥くんとの事は、やっぱり全てが終わった後では遅いのだ。
ふうっと一息つき、顔を上げると、ぼんやり天井を眺める実弥さんの顔が見えた。
こんなことをして何も言われないのも、やっぱりお酒のせいなんだろう。
「そうでしたね。じゃあ、実弥さんに素敵な女性ができるまでか、私がここを追い出されるまでか。どちらにしろ、それまでは私が実弥さんのお世話をさせて貰いますね」
精一杯の笑顔で言えば、目を合わせたまま私の方に体を向け、再度肘枕をした状態に戻る。
「世話なんてできんのかァ」
ニヤニヤとした表情だけど、どうしても目にいつもの力がなく、とろんとしているので、どうにも艶かしい。
「…多分」
あまりの破壊力に心臓がもたず、目をそらしながら返事をする。