第17章 休日と音柱
「何となくの記憶の中に…それでなくても子ども達に囲まれて、寝返りさえうてないって記憶しかないんで。一人で寝るのはやっと慣れた感じですよ。だから実弥さんがいてかなり驚きましたけど、何だかとっても嬉しかったですよ」
目線を外して、現代での生活を思い出し、クスリと笑う。あれだけ一人でゆっくり寝たいと思っていたのに、いないと寂しく感じるなんて…なんて都合のいい。
驚きはしたが、こんな状況で話ができるのが嬉しいのも、事実なのだ。
「…そうかァ」
「でも、こんなとこ、天元さんに見られたら、間違いなく、また色々言われちゃいますね」
天元さんの姿を想像すると、クスクスと笑いが込み上げる。
「勝手に言わせとけェ。それに普段だったらもう帰ってる時間だから、帰ってるんじゃねえかァ」
「そうなんですね。天元さんって、普段もお嫁さんいるのに、嫁に来いとか他の隊員の方に言ってらっしゃるんですか?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみる。
三人のお嫁さん達を大切にしているのは本を読んでいて知っている。だから、冗談だとしても嫁に来いと、あんなに軽々しく言うイメージはなかったのだ。
「いや、あまり聞かねェ。嫁の事は大事にしているみたいだがなァ」
「そうですよね」
実弥さんから視線をそらし、考える。
そりゃそうだ。大事にしてるのは知っている。
やっぱり私の隠していることに興味があって、言ったのだろう。そうでないと、嫁に来い、なんて言う筈はない。なんとも子どもっぽい。
「…あいつの所に行きてえのか?」
視線を戻すと、笑みはなく、真剣な表情で見られていた。
「いや、このお屋敷を追い出されて、他にどこにも行く宛がなければ、お世話になりますけど。天元さんはお嫁さんがいらっしゃるので、私が行ってもお役には立てそうにないですから、行くとしても、本当に最後の最後ですね」
「お前、俺が追い出したらどこへ行くつもりなんだァ?」
「一応、一番の候補は義勇さんのお屋敷ですね」
「アァッ!何であいつの所なんだッ!」
一気に眉間に皺が寄り、口調も荒くなる。義勇さんの事は嫌いなのだろう。だからこそ、いつも通り答える。