第17章 休日と音柱
「…お前が一緒に寝るって、誘ったんじゃねぇか。浴衣掴んで離さなかったぞォ。覚えてねえのかァ」
「えっ?!」
寝ぼけていたとは言え、そんな事を本当に口走ったのだろうか。本当に全く記憶にない事に、動揺が隠せない。
「覚えてなさそうだなァ。寂しいって言ってたぞォ」
目はまだトロンとしたまま、ニヤリと笑いながら言う姿は、艶かしいが、自分が言ったと言われる事が全く信じられず、聞き返す。
「えっ?寂しい?嘘ですよね?そんな事言ってませんよね?」
「俺が嘘を言うかァ」
笑いが消え、少しだけ真剣な顔で見つめられ、言葉に詰まる。
「…すみません。せっかくのお休みだったのに、ゆっくり休めなかったですね」
「…いや」
そう言いつつも、実弥さんは少しだけ目線をそらす。
「本当すみません。それにしても、いや、なんと言うか…恥ずかしいですね、自分がそんな事言ったなんて。本当すみません」
「そんなに謝らなくていい。まだ夜明けまで少しある。もうひと眠りするかァ?」
そう言いながら左手で、私の頭をゆっくりと撫でる。
実弥さんの触った部分が一気に熱が上がっていく。何とか平静を装いながら、言葉を続ける。
「寝起きが衝撃過ぎて、一気に目が覚めちゃったんですよ。さすがにすぐには寝れそうにないですね。実弥さんは寝ます?」
「眠れなさそうだが、もう少し布団で横にはなっとくかァ」
「それより、実弥さん、酔ってます?」
ふと、疑問に思っていたことを尋ねてみた。
「何でだァ?」
「いや、まず私の部屋にいることでしょ。あと、この状態なのにそのままなこと。普段だったら絶対あり得ませんから」
「…そうだなァ」
「あと、素直なとこ」
「アァッ?」
少しだけ眉間に皺が寄ったが、これだけ話してもこの状況は変わらないのは、やっぱり実弥さんが酔っている証拠だと思う。
「まぁ、酔った時って、何となく人肌恋しくなりますもんね」
「お前もあるのか?」
少しだけ驚いた顔で言われる。