第17章 休日と音柱
ふと目が覚めた。まだ暗い。夜明けまではまだありそうだ。
だけど、何かいつもと違う。
はっきりとしない意識の中、やっとその違いに気づいた。
誰かがいる。
何故すぐに気づかなかったのだろう。
背中にピッタリとくっついて、後ろから抱き締められているようだ。
急にドキドキとして、すっかり目が覚めてしまった。
後ろから回されている手をよく見れば、見慣れた傷だらけの手。
実弥さん…だ。
何でこんなことになっているのだろう。
色々と考えるが、いつも通り寝た記憶しかない。
首元にゆっくりと息がかかる。実弥さんにくっついている箇所が一気に熱くなり、意識がそこへ持っていかれる。
ヤバい。このまま首元に息がかかり続けると、変な気分になってしまう。
ゆっくりと寝返りをうつ。
実弥さんと向かい合わせになる。少しだけ眉間に皺が寄ったが、起きてはないようだ。
規則的な呼吸が続く。
何度も思うが寝ている顔は天使のようだ。いい夢でも見ているのだろうか。
だが、よくよく考えると、この状況はすごくないか。
実弥さんの顔が目の前にある。あと10cmも近づけば、キスできそうだ。
…って、何を考えてるんだ、私。
寝起きとは言え、あまりに恥ずかしい思考に、一気に顔が赤くなるのが分かる。
「はぁ。なに考えてんだか」
声にならない声で、自嘲気味に呟く。吐き出したと言ってもいいかもしれない。
「なに考えてんだァ?」
急に頭のすぐ上から声がかけられ、ビクッとなる。
顔を上げれば、実弥さんがまだ少しだけとろんとした目でこちらを見ていた。
「起こしちゃいましたね、すみません」
「いや」
「あの、実弥さん。これ、どういう状況なんでしょうか?」
まだぼんやりとした表情の実弥さんに尋ねる。