第4章 お館さま
「良かった。それと、これからノブは記憶喪失ということにしてもらえるかな。未来のことは私とノブの秘密だよ。いつどこからかの情報が漏れるか分からない。危険はできるだけ避けたい」
「承知しています」
「でも、どうしても話したい、説明したいと思う人ができたら、話してもいいからね。ノブが信用した人であれば、大丈夫」
「はい。でも、実弥さんにはどう説明すれば?」
「そうだね。実弥には私から説明しよう。実弥にも知っておいてもらった方がいいね。だからノブはできるだけこの世界に馴染むように努力すること。あとは目立たないようにね」
「はい!」
不安はあるが、前を向くしかない。
実弥さんに迷惑をかけないためには、早くこの世界に馴染むしかない。目立って無惨に見付かってしまえば、私は確実に殺されるだろう。
それだけならいいが、鬼のいない未来が変わってしまうかもしれない。
さぁ、私の戦いの始まりだ!
気合いを入れて返事をする。
「では実弥に話をしよう」
お館さまに呼ばれて、私のことの説明を受けた実弥さんは返事はしたものの、ちょっと訝しんでいたと思う。
昨日からのおかしすぎる言動への説明が、あまりにもフワンとしすぎている。お館さまだから突っ込まれなかっただけだ。
お屋敷にご厄介になる話は、お館さまからのお願いなので、断らなかった。いや、断れなかったと言った方が正しいのだろう。
だって、お館さまに頼まれているのだから。断れるはずがない。
横でとても嫌そうな顔をしていたのは、見なかったことにしよう。分かるよ、実弥さんの気持ち。誰だって厄介事は抱えたくない。でも仕方ないって。
先程の前向きな気持ちは、実弥さんの顔を見て少しくじけそうになっていた。