第17章 休日と音柱
【実弥side】
だが、すぐにその微睡みから、戻ってきてしまった。
そんなに時間は経っていない。
気分が悪い。
寝る直前まで宇髄と話をしていたからか、ノブが宇髄と行為に及んでいる夢を見た。
胸糞悪いにも関わらず、自分の下半身には熱がこもっている。
「クソッ」
寝返りをうつが、一度目が覚めたためか、寝れる気がしない。
隣からは羨ましい位に規則的な呼吸が続いている。
「一人だけで気持ち良く、寝やがって」
苛立ちを吐き出すかのように呟く。
寝れそうにない体を起こし、苛立ちの原因でもあるノブの部屋に足が向かう。
気づけば、ノブの横に座っていた。
俺が寝れねえのに、一人だけ気持ち良さそうに寝ているのに腹が立ったのだ。
規則正しい寝息を立てるノブは俺が来たことさえ気づいてないようだ。
ノブの髪はいつもきっちりと束ねられている。だけどその制約は寝る時には解き放たれているようだ。
ゆっくりと髪の毛を掬うと、指の間からさらりと落ちる。指から落ちていく髪の毛の感覚が気持ちが良くて、何度かそれを繰り返す。
「実弥さん?」
さっきまで確実に寝ていたはずなのに…。
そう思ったが、声をかけられ、何も言葉が出ない。
「ふふ。寂しくなったぁ?お酒呑むと人肌恋しくなるもんね。いっしょ寝る~?」
目は焦点が合っておらず、ふわふわとした声。いつもと違って、敬語でもない。寝ぼけているのだろう。
左手で布団をあけて待っている。
なんて事をしてるんだ、こいつは。夜中に枕元に立つ男に布団に入れと言うなんて。
だけど、その誘惑は、とても魅力的だった。
普段なら、そんな誘惑が魅力的だと思うことはない。そもそも、ノブの部屋に夜中に入ることはない。
なのに、自らここに来た。
何で来たんだ。俺ですら自分の行動が全く分からない。
理解できない。
ただ、ノブの誘惑は、今日の俺にとっては、拒否するという選択肢は出てこなかった。