第17章 休日と音柱
やっと部屋に戻ってこれた。まさか天元さんと鉢合わせするなんて…。
髪の毛を手拭いで拭きながら、先程までのやり取りを思い返す。
嫁に来い…
天元さんの事は好きなキャラクターだ。柱の中でも実弥さんの次に好きかもしれない。
流石にあの顔で、壁ドンされて嫁に来いと言われると、ドキドキしてしまう。
でも、さっきはそうは思わなかった。どこか、他人事のようだった。
それに、いくら私が隠している事が知りたいからと言って、嫁に来いと言うなんて…。イケメンの考えることは分からない。
何で執着するのだろうか。
私の事など放っておいてもいいだろう。実弥さんが知ってて、自分が知らないから、だろうか。だけど、そんなに拘る必要はないと思うのだが。
頑なに事情を話さなかったのがいけなかったのか、とも思う。だけど、これ以上自分の事を知られるのは避けた方がいいと思う。
信用していない訳ではないけど、秘密を知る人が増えるとそれだけ危険が増えると言うことだ。悲鳴嶼さんにも言いたくはなかったけど、あの人は正直に言わないと信用してもらえないと思う。
本当に命を狙われる可能性があるのかは、疑問だが、お館さまも言っていたし、無惨の性格からしても、あり得ない事ではない。
取りあえずひっそりと過ごすのが、一番だということだろう。
大好きな実弥さんと一緒に過ごせているのだ。私が他に望むことはない。
「だいたい乾いたかな」
時折聞こえる天元さんの笑い声に、今日の夜はとても楽しく感じる。一人ではないと言うだけで、安心してゆっくりと過ごせるのだ。
久しぶりに障子を開け、夜空を見上げる。現代では見ることのできない位、たくさんの星が瞬いている。今この瞬間も鬼が動き出し、鬼殺隊員も闘っているのだろう。綺麗な夜空とはかけ離れているが、それも事実だ。
普段は開けることはない窓から夜空を見上げながら思いに耽り、そして祈る。
どうか、鬼殺隊員の人が犠牲になりませんように…
今日は実弥さんは屋敷にいるからその心配はない。だけど、誰かは鬼殺の仕事をしているだろう。
今日の和やかな日常は、非日常だ。
だけど、この時間が早く日常に戻ることを切に願いながら、障子を閉め布団に入り込んだ。