第17章 休日と音柱
「ふうーん。じゃあ不死川は?」
「アァッ?何で俺が出て…」
「そりゃ、実弥さんの事は大好きに決まってるじゃないですか。あ!色恋の好きとは違いますからね」
実弥さんが何か喋っていたが、同時だったので、私はそのまま、至極当たり前の事を答える。
誰にでも言ってるが、実弥さんの事は大好きなのだ。色恋のとは違う、と言うことはちゃんと付け加えておく。
「不死川は大好きなのかよ。こんな仏頂面のどこがいいんだよ。まぁ気が変わったらいつでも言ってくれよ。うちの嫁達もお前は気に入るはずだから」
やっと壁ドン状態から解放されたものの、目の前にいる天元さんを、見上げる。やっぱり大きいなぁと実感する。
何度言われても、嫁のいる人に行く必要はない。私が行っても、何も役に立つことはないからだ。だけど、今後の保証は欲しい所だ。
「どこにもいく宛がなくなったらお世話になるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。でも、嫁ではなくて、居候させてもらうだけですからね!」
「ハッハッ!面白れえなぁ。やっぱり嫁に来いよ」
「嫌です。はい。もう、この話は終わりです。ほら、呑むなら呑んでください。私も部屋に戻りますから。髪の毛乾かしたいんです」
目の前に立ち続ける天元さんの後ろに回り、背中を押して歩く。私力じゃ絶対に動かないだろうけど、歩いてくれてるので、良しとしよう。何とか実弥さんの横まで押しやり、手を離す。
「よし、呑み直すぞ、不死川」
元はと言えば天元さんが原因だと思うのだが、一言言うと、振り回した張本人はさっさと客間に戻って行った。
「実弥さん、すみません。お騒がせしましたね。部屋に戻りますけど、何かあったら声かけて下さいね」
呆れた顔の実弥さんに一礼をして、お詫びの意味も込めてにっこりと笑いかける。そしてまた道場の方へ体を向けて歩き出そうとする。
「こっちを通っていかないのかァ?」
「ええ。道場の方からきましたし。下駄をこっちに置いたままにしてたら、明日、実弥さん使えないでしょ?回って戻ります。ありがとうございます、実弥さん」
「おいッ!不死川~ッ!」
「ふふっ。呼ばれてますよ」
「煩いぞッ!宇髄ッ!」
軽く眉間に皺を寄せ、客間に向かって吐き捨てる。
「じゃあ、ごゆっくり」
そう言い、私は軽く会釈をして、道場の方から部屋に戻ったのだった。