第17章 休日と音柱
「宇髄、何してるんだァッ!」
廊下の奥から実弥さんの声が聞こえる。随分と苛ついているようだけど、天元さんの頭が邪魔をして、実弥さんの姿は確認できない。
「ん~口説いてんだよ。お前の嫁じゃねえならいいだろうが」
体勢はそのまま、顔だけ実弥さんの方を向けている。横顔しか見えないが、ニヤニヤとしていて、悪戯中の悪ガキのようだ。
間違いなく反応を見て楽しんでいるだけだ。
「はぁ。実弥さん、大丈夫ですよ。どう考えてもからかってるだけでしょ?天元さん。どうでもいいけど、早くどいてもらえますか?それと、私で遊ばないでください」
大きなため息をつき、先程より近くにある整った顔をしっかり見据えながら、ハッキリと言えば、天元さんは残念そうに私の顔を見ながら呟く。
「どうでもいいとは寂しいこと言うなぁ。半分は本気なんだぞ」
「半分じゃないですか!どうせ私が隠している事を知りたいだけですよね。同居させていただくならお伝えしますけど、嫁になる必要は全くないですよね?ってか、私、嫁にしたいと思うような容姿でもないですし。本当、格好よいからと言って、女性をからかうのはどうかと思いますよ。誰もが嫁になれと言えば、はいと言うなんて、思わないで下さいね!」
相手にされないのは分かりきっているが、流石に半分と言われればあまり気持ちの良いものではない。半分もあれば良い方かもしれないが。
だけど、この状態から早く解放されたいこともあり、早口で捲し立てて言う。
ドキッとしたのは最初の一瞬だけ。流石におばちゃんには刺激が強かったけど、天元さんのキレイな顔も見慣れてしまった。
まぁからかわれているのも分かるから、もうドキドキなんてしないのだ。早く部屋に帰って髪の毛を乾かしたいのが、今一番やりたいことだ。
「くっくっくっ。面白れぇ。ノブ、やっぱり俺の嫁にならねえか」
「なりませんっ!天元さんにはもうお嫁さんいらっしゃるでしょう。嫁はそんなに必要ないです」
顔は先程より離してくれたが、何故かまだ壁ドン状態のまま、少しだけ真剣な顔をして質問してくる。
「ノブは俺の事が嫌いか?」
「嫌いではないですよ」
「じゃあ好きだろ」
「いや、好きか嫌いかと言われれば好きですけど」
実弥さんは別格として、天元さんも鬼滅の刃の中でも好きなキャラクターの一人ではある。