第4章 お館さま
「分かったかな。このままだとかなり危険な状況だから、身の振り方を考えた方がいい。まだ鬼舞辻はノブのことに気付いていないようだからね」
「はい」
消え入りそうな声で返事をする。
「私としては、そのまま実弥の屋敷にいてもらった方がいいと思うんだ。安全面から言えばこの屋敷でもいいんだけど、人の出入りが多いからね。知らない人間がいれば噂になる。人の口には戸をつけられないからね。その点、実弥の屋敷は人の出入りはこちらよりはるかに少ない。それに柱だから、ノブに何かあった時に対処しやすいしね」
「でも、実弥さんに迷惑をかけてばかりで、これ以上迷惑をかけられません。前にいた世界とは違うことだらけで…今は身の回りのことさえできないんです。実弥さんは鬼殺隊の柱で、とても大変な仕事をされてますし、家に帰ってきたときこそ、ゆっくりして欲しいんです。私のことで実弥さんの大切な時間を使わせてはいけないんです!」
「本当に実弥のことを思ってくれているんだね。ありがとう。だからこそ、ノブが実弥の側にいてくれて、身の回りのことを手伝ってもらえると、私は安心できるのだけどね。実弥は無茶をしがちだから」
「その身の回りの事をお手伝いしてもらっている状態なんです…」
「今のノブは、でしょ。大丈夫。三人のお母さんなんだから、すぐにできるようになるよ。今までしていたことなんだし、慣れるまでだよ、手がかかるのは」
そう言われると返しようがない。
「それに、他の所に行っても、実弥のことが気になって仕方ないだろうからね」
と、少し茶化すように言ってきた。
「…」
バレてる。絶対バレてる。
私が実弥さんの事が好きだってことが。
何なんだ、お館さまって。まさか超能力者か。
「いいかな、ノブ」
有無を言わせない雰囲気を漂わせて問われれば、返事は一つしかない。
「…はい」