第17章 休日と音柱
夕食を食べ終わり、片付けを済ませる。
客間からは時折天元さんの笑い声が響いてくる。楽しそうで何よりだ。
実弥さんは自らこういった時間を持つことはないのだから、天元さんの存在はありがたいと思う。あの実弥さんをうまく掌で転がせるのは、お館さまと天元さんくらいだと思う。
それに、天元さんは何だかんだで面倒見が良いのだと思う。柱の中でも悲鳴嶋さんに次いで二番目に年長だ。悲鳴嶋さんはよくも悪くも、自分の道をただ進むイメージで、年長者として柱を纏めることはあっても、今回の天元さんみたいに私生活には関わらなそうな気がする。
玄弥くんや胡蝶姉妹のように自ら寄ってきた人とは関わるけど、誰かに自ら関わりに行くことはなさそうだ。
その点、天元さんはこんな感じで他の柱にもちょこちょこと関わるのだろう。出自が影響しているのもあるだろうけど、元々の性格もあるとは思う。
特に実弥さんは突っ走って行くから、放っては置けない弟みたいな存在だろう。
だからこそ、そんな人が実弥さんの周りにいてくれることが分かると、安心する。よくも悪くも裏表のない実弥さんだから、安直に走ってしまうところを、冷静に止めてくれそうな気がする。
個性的な人が多いけど、柱や鬼殺隊のみんなは、本当に素敵な人達ばかりだ。
「そろそろお風呂に入ろう」
外を見ればもう真っ暗だ。いつもならもう寝る支度をしている頃だが、今日はお風呂にまだ入っていない。
準備をして、部屋を出る。
いつもは客間の前を通って行くが、今日は道場の方から回って行くことにする。一度道場に行き、そこから外へ出る。少し行けばトイレがあり、そこからまた屋敷に上がれる。そこを真っ直ぐ行けば、お風呂場だ。かなり遠回りになるが、客間の前を通らないで行けるので、ありがたい。
できるだけ音は立てないようにゆっくりと歩き、風呂場の扉も開け閉めする。まぁ現代のような造りではないので、当然廊下も扉もギシギシと音が鳴る。
「ん?ノブか?」
天元さんのそんな声がしたけど、反応はしない。実弥さんも分かってくれてるし、聞こえていないふりをしよう。
酒呑みに絡まれるといいことはないのだ。