第17章 休日と音柱
「実弥さん、お酒呑まれるんですね」
ぐい飲みをお盆に載せ、取り皿やお箸等も載せる。それとは別に少し大きめのお皿も取り出す。
「まぁ、宇髄が来た時に付き合い程度に呑む位だがなァ」
「天元さんはよく来られるんですか?」
会話はしながら、大きなお皿に天ぷらと唐揚げを全て載せ、お盆に置く。
そして、おしぼりを作るために流し台へ行く。
「たまになァ。今日みたいに、どこからか俺の休みを聞いて、酒持って押し掛けてくんだよ」
「そうなんですね」
「取りあえずこれは持って行くぞォ」
「じゃ、これもお願いします」
そう言いながら振り返り、お盆におしぼりを載せようとすると、置いたはずの唐揚げと天ぷらが私の皿に戻っている。
「えっ?実弥さん、おつまみなくなっちゃいますよ」
「ノブはまだ食べてないだろうがァ。つまみはあと漬け物位でいいから、ちゃんと食べろォ」
実弥さんの優しさに胸の奥がじんわりと温かくなる。やっぱり優しいなぁ。
「ありがとうございます。じゃあ、実弥さんの好きな卵焼き、作って持っていきますね」
「……」
実弥さんが何かしら思案しているようだ。卵焼きは大好きだから、もしかしたら、一人で食べたいのかもしれない。
そう考えると、実弥さんがとても可愛らしく見えてくる。
「ふふっ。ご希望でしたら、また明日も作りますよ。天元さんにおつまみ作るって言っちゃいましたし。後でお漬け物と一緒に持っていきますね」
「…わかったァ。じゃあ、後で頼むなァ」
「あ、実弥さん。あとここが終わったらお風呂に入ろうと思ってるんですけど、裏から行かせてもらいますね」
「そうだなァ。その方がいいだろうなァ。前を通る度に宇髄が絡んできそうだからなァ」
眉間に皺を寄せる実弥さんは、それが想像できているのだろう。
「はい。天元さんは鋭そうなので、私余計なことまで喋ってしまいそうなので…」
「そうだなァ。お前、突っ込まれるぞ。間違いねェ」
先程までの眉間の皺はどこへやら。ニヤリとしながら、見られる。
「なので、ちょっとできるだけ関わらない様にお部屋にいますけど、何かあったら声をかけてくださいね」
「わかったァ」
そう言うと、実弥さんは色々と載ったお盆を持ち、客間の方へ廊下を歩いて行った。
「遅いぞ、不死川」
そう言う天元さんの声が聴こえてきた。