第17章 休日と音柱
「夫婦じゃねェ!」
「夫婦じゃありません」
二人の声が見事に合わさる。
「はっはっはっ!こりゃ面白れぇ。息もピッタリじゃねえか」
ツボにはまったのか、天元さんは爆笑している。
「とにかく、私は居候で、嫁ではないですから」
「まぁ、どっちでもいいさ。それより、不死川、呑もうぜ」
「ダメだと言っても、どうせ居座るつもりだろォ」
先程までの勢いはなく、諦めた様子で実弥さんは言う。今までもそうだったのだろう。
「そうだよ。せっかくだからノブも一緒に呑むか?」
「いえ、私は遠慮します。実弥さんとお二人で楽しんでください。おつまみ、少し作りましょうか?」
この二人の間で呑んでみたい気もするけど…。それよりも、天元さんは鋭いから、私は色々墓穴を掘ってしまいそうだから、やめておきたい。
「そうだなぁ。頼む。じゃ、俺はいつもの部屋に行っとくぞぉ」
そう言うと、返事も聞かずに勝手知った家のように廊下を迷いなく進んでいく。いつもの部屋ということだが、多分客間だ。何度かこんな形で呑むことがあったのだろう。
初めて知る柱達の日常に、何だか特別な気分になる。
「じゃ、取りあえずこの天ぷらと唐揚げはおつまみにしましょうね。実弥さんの食べかけはどうします?」
「今から食う」
そう言い、残りのご飯と味噌汁を軽く平らげる。
「お酒はどうします?熱燗だと、やり方を教えて貰えます?道具類はどこでしょう?」
「冷やでいい。いつもこれだァ」
そう言うと、ぐい飲みを取り出す。一見無地のようだが、内側を見ると細かい装飾が施されている。
そこの棚には他にもお猪口や徳利があり、お酒の関係はここに入っているようだ。