第17章 休日と音柱
「おー自己紹介してなかったな。俺は音柱の宇髄天元だ。まさかこの不死川に嫁ができるとは思ってなかったから、お前の名前も覚えてたんだよ。
だけど、ノブ、お前はよくこんな地味で、いつも不機嫌そうで、言うことは喧嘩腰で危なっかしい奴と生活できるよなぁ」
「えっと、天元さん、そもそもが間違ってます。私は嫁じゃなくて、ただの居候ですよ。ね、実弥さん」
また嫁…いつになったら、この下りを続けるのだろう。
右手を顔の前で振り、違うと表現し、実弥さんにも話を振る。
「嫁じゃねェって、あの時も言っただろうがァ」
眉間の皺がかなり深く、すごい顔で睨んでいる。苛ついているのだろう。
だけど天元さんも全く主張を曲げようとしない。
「いや、お館さまが認めてんだから、どう考えても嫁だろ」
「お館さまは嫁とは言ってねェ!」
実弥さんはかなり大きな声で否定するけど、天元さんには全く響いてない感じがする。
「あーもう、またこの下り。どの方と話しても同じなんですけど」
もう諦めにも似た台詞しか出てこない。
「だいたい、こいつらは全く人の話を聞かねェ」
実弥さんも天元さんから顔を背けながら吐き捨てる。
「って言うか、お館さまが皆さんがいる前で言ったのが、そもそもの原因ですよね」
「おいっ!お館さまは悪くねえ」
天元さんに向けられていた鋭い眼光が、今度は私に向けられる。
「悪口じゃないですよ。事実を述べただけですよ」
「あぁっ?悪口だろうがァ」
「悪口じゃあないですって。お館さまって、実弥さんが思っているよりも、いたずらっ子ですって」
実際二人でそんな話しもしたし、否定もされなかったし。お館さまの一言でこうも踊らされている感が否めないのに、違うと言いはる根拠は、お館さま、だからなのだろう。
「んな訳ねえだろォ。何言ってるんだァ」
「いや、鬼殺隊の皆さんの前ではそんな感じはないでしょうけど、二人で話した時、お館さま認めてましたって」
「ああっ?」
更に実弥さんの眉間の皺が深くなったところで、天元さんがニヤニヤしながら言う。
「お前ら、仲良いなぁ。お似合いの夫婦じゃねぇか」