第17章 休日と音柱
甘味屋を出て、買い物をしてお屋敷に戻った。
実弥さんは昼からも稽古をしているようだ。本当に鬼殺が殆どの生活だ。
さて、思ったよりも買ってしまったが、まぁどうにかなるだろう。
せっかくだから、天ぷらでも作ろうといつもの八百屋に寄ったら、鶏を締めたようで、おこぼれを貰った。
現代では鶏肉は安くてすぐに手に入るけど、まだこの時代はそこまではない。自宅で飼っている鶏を食べることも多い。
今日はせっかく油を使うので、唐揚げも作ってみようかと考えていた。
…それにしても、疲れた。
買い物に疲れたと言うより、勇一郎さんとのやり取りに精神的に疲れた。
台所でお茶を飲み、少しだけ休憩をする。それだけでも、疲れが飛んでいく。やはりこの世界に来て、体は若返っているようだ。少々無理しても大丈夫なので、未だに驚くことがある。
「さぁ、片付けよう」
一息つき、洗濯を取り入れ、お風呂の準備をする。それだけでも、すぐに時間が経ってしまう。
「実弥さん、稽古はもう終わりますか?お風呂の準備はできたので、いつでも大丈夫ですから」
庭で稽古をしている実弥さんに声をかける。ちょうど汗を拭いているところでだ。流石の私も、稽古の真っ最中に声をかける勇気はない。
「分かったァ」
そう返事をしたかと思うと、また稽古を再開する。終わるのは、もう少し後のようだ。準備できている事を伝えたので、後は実弥さんのタイミングで稽古は終わるだろう。
少しだけ稽古の様子を見て、台所に戻る。
今度は夕御飯の準備だ。天ぷらと唐揚げはある程度準備して、揚げるだけにしておこう。あとはご飯にお味噌汁。いつもと変わらない。
「唐揚げ、うまくできるかなぁ」
鶏肉を切り、下味をつける。量は少ないが、二人だからこの位で十分だろう。
そう言えば、夫も子ども達も、唐揚げが大好きだった。作る時は大皿に山のように作っていたが、全部食べてくれていた。美味しい、と言ってくれるし、揚げるだけだから、よく作っていたなぁと、思い出す。
少しだけ、チクンと胸が痛んだが、大きく息を吐き出し、気持ちを切り替える。
「実弥さん、唐揚げ好きかなぁ」
今は実弥さんのために作る。実弥さんが万全の状態で鬼殺に向かえるように、その手助けをするのが、今の私の仕事だ。
気持ちを切り替え、準備を続けた。