第4章 お館さま
「実に興味深い話だね。主人公は…、そうだね、竈門炭次郎じゃないかな」
「えっ!そうです。でもなぜ?」
「鬼を連れた隊士は珍しいし、物語りにするにはいいんじゃないかとね。それで物語の最後は鬼舞辻無惨を倒しているのかい?」
「そこは例えお館さまに聞かれても、言えません…すみません。私が話したことで物語の結末を変わってしまうかもしれない。それが怖いのです」
「うん。分かった。でも、ノブの住んでいた世界には鬼はいなかったんだよね」
「はい!」
たぶん、ご聡明なお館さまの事だ。私が言わなくても、それだけで理解できただろう。
「では次はこれからのノブの事を考えよう」
「えっ?私ですか?私のことはいいですよ!」
「いや、駄目だよ。鬼舞辻は君のことを知れば、何としても手に入れようとするだろう。ノブは未来の事が分かるのだから。それこそどんな手を使っても欲しがる筈だよ」
いやいや、そんなことはないだろうと思う私にお館さまは続ける。
「そんな事態になれば、ノブのいた世界に鬼が存在してしまうかもしれないよ」
「!!!」
「それだけ君は稀有な存在なんだよ」
「でも絵空事のようですし、信じる人の方が少ないですよ。私だって信じられない話です」
「そうだとしても、鬼舞辻は自分にとって有益だと思われる情報は、ほんの些細なことや不確かなものでも欲しいと思うよ。もし信じるに値しない話であれば、君を殺すだけでいいんだからね」
「!!!!」
そうだ。そういうことだ。自分ですら信じていないことでも、無惨は生き伸びるために必死だ。少しの情報でも欲しいはず。
ましてや未来の話。自分が倒されている話だ。
嘘や絵空事の物語でも、自分で確認しないと済まないはずだ。
どっちにしても、あとは殺せばいいだけだから。
まさか自分が物語に噛んでしまうかもしれない状況と、無惨に殺されてしまうかもしれないという状況に、どっと冷や汗がでてきた。