第4章 お館さま
「じゃあ改めて、自己紹介をしてもらえるかな」
「はい。三井ノブと申します。歳は40歳です」
「落ち着いているけど、声の感じだともう少し若いかな」
「実弥さんから散々言われました。何度も違うって言うんですが、17,8歳にしか見えないと…。お館さまもそう思われますか?」
「そうだねぇ。私は見えないから分からないけど、実弥が言うんだからそういう見目をしているのだろう。後で姿見があるから、自分で確かめてごらん」
「百聞は一見に如かず、ですね」
「そうだね。さて、本題に入ろう。ノブは一体どこからやって来たのかな。私のことも知っていたようだったし」
あ、もうバレてる。
「お館さまに嘘は言えません。嘘を言ったところで見透かされそうですし。話がまとまらないのですが、いいでしょうか。自分ですら、まだ何が起こってるのか分かってないんです…」
「大丈夫だよ。信じるよ。ゆっくりでいいから、話してくれるかな」
お館さまの優しい声に意を決して話し始める。しっかりお館さまを見据えて。
「…はい。たぶん私は、この時代から約百年程後の世界に住んでいました…」
私は昨日からの信じられない出来事を、まとまらないながらも一生懸命話した。お館さまは所々で相づちをうちながら聞いてくれている。
一通り話した時に、やっと話しかけられる。
「ノブがこの世界に飛ばされてきたと言うことは、理解できたよ。では、なぜ私のことを知っていたのか話してもらえるかな」
その言葉を聞き、どう説明すればいいのか迷ってしまった。本を見た、でいいのだろうか。
あれはノンフィクションのはずだ。おとぎ話のようなものだし、漫画だからと現実にあったことだとは思いもしなかった。
でも、今の目の前の出来事が現実だ。
少しの沈黙の後、私は話し出した。
「私のいた世界では、一人の鬼殺隊員のことを主人公にした物語がありました。その話の中にお館さまが出てきていたのです」