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【鬼滅の刃】あなたに逢いに 

第16章 呉服屋さん



すると、幸子さんは先ほどまでの真剣な顔から、いつもの柔らかい表情に変わり、笑い始める。

「はははっ!違う違う!違うわよぉ!これ、うちだけが扱ってる生地なのよ。だから、驚いちゃって」

「えっ?でも、隣町のお店…」

頭の中は疑問ばかりだ。

「掛川は、うちの2号店。だから、大丈夫よ」

「そうなんですか?ちょっといけない物でも買ってしまったかと、不安になっちゃいましたよ」

一気に不安が和らぎ、笑顔に戻る。
幸子さんはそのまま生地を手に持ち、ゆっくりと眺めている。

「でも、あの山の中から、よくそれを選んだわね」

「黒がとってもキレイだったから、選んだんですよ。私、あまり赤とか苦手で…」

昔からあまり明るい色は苦手だ。原色が似合うと言われ、母は明るい色ばかり買っていたが、自分で選べるようになってからは、色は緑や青、黒が多かった。
だから、あの山の中でも、一番落ち着いた色を選んだのだ。

「そうなの?似合いそうなのにね。でも、それ、かなりいい生地だからね。お買い得だったわね」

「そうみたいですね。お店の方に教えて頂きました。えっと…名前は…忘れましたけど、若い男性の方に」

何て名前だったかな?
本当、興味がないと、全然覚えていない。

「若い男性なら、勇一郎かしら?」

「あー。勇一郎さんって、名前だった気がします。確か蜜璃ちゃんがそう言ってたような…」

「あの子ね、私の息子なのよ」

「えっ!息子さん?幸子さん、あんなに大きな息子さんが?」

かなりの衝撃発言で、声が上ずってしまう。
同年代と思っていた人にあんなに大きな子どもが…衝撃でしかない。江戸時代とかは、早く嫁に行って、早く子どもを産んでいたイメージはあるが、この時代もそれが普通なのだろうか。

「そんなことないわよ。それよりも、ノブちゃん、お友達って甘露寺様かしら?」

「はい。蜜璃ちゃんがお着物見に行くのに、ついて行きました。それで、待ってる時に見つけたんです」

「甘露寺様とお友達だったなんて、知らなかったわ~」



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