第4章 お館さま
横に実弥さんが座る。
どうしたのかと思うとすぐに、目の前の襖が開いた。
「突然呼び出してすまなかった。よく来てくれたね、実弥。」
「いえ、お館さまにおかれましても、ご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」
「ありがとう、実弥。君も突然呼んですまなかったね」
「畏れながら、お館さま、なぜこの女をお呼びになられたのか、ご説明いただけますか。この女は今日の明け方に屋敷の前に倒れていた所を助けたのです」
「そうだね。驚かせてすまなかった。この子のことは鎹鴉が教えてくれたんだよ。本人から少し話を聞きたくてね、呼んだんだよ」
「分かりました。でもなぜこの女なのですか。わざわざ、話を聞く価値があるのですか?」
うぅ、さっきから女呼ばわりされている。あと、実弥さんから話を聞く価値がないって言われた。
そりゃ、昨日から変なことばかり言ってるもんね。仕方ない。放り出されなかっただけ、良かったと思わなきゃ!
それにしてもお館さまは何でも知ってるんだなぁ。
本当にいい声。本物を聞けて嬉しい~!
本当フワフワする。
「価値があると思うからこそ、ここに来てもらったんだよ。君、名前を教えてもらえるかな?」
「…おい!話を聞いてるのか」
私に話が振られてた~!実弥さんが殺す勢いで睨んでる…。お館さまの声でフワフワしてて、途中から全く聞いてなかった。
「すっ、すみません。聞いてませんでしたぁ~、お館さまの声が本当にいい声で。本物はこんな感じなんですねぇ。本当フワフワして、夢見心地でしたよ」
「おい!お館さまに何て口の聞き方をしてるッッ!名前だァ、名前ッ!」
あぁ、実弥さんの顔がどんどん殺気を帯びていく…。
「何度もすみません。私は三井ノブと申します」
「ノブだね。色々と聞きたいことがあるのだけど、話してくれるかい?」
「はい。私もお館さまとお話ししてみたいと思っていました。聞く価値のある話ができるか分かりませんが、ぜひお願いします」
「実弥。ノブと二人で話をするから、席を外してもらえるかな。終わったら、また呼ぶから」
「…御意」
不服そうな顔を私に向け、実弥さんが部屋から出ていき、お館さまと二人きりになる。