第15章 岩柱
だからこそ、実弥さんが共に過ごしたいと思う人はどんな人なのだろうと、思う。全てが終わってから、やっと考えられた事なのだろうけど。
じゃあ、カナエさんは…。
そう考えて、少し辛くなってきた。
私はどうだろう。考えてみたが、実弥さんがそう思ってくれるという想像は全くできなかった。
私はいつも馬鹿だ阿呆だと言われているから、分かっているが、頭の良い方ではない。
それに、見た目もよくない。胸も小さいし、お腹も出てるし、足は太いし…挙げればきりがない。まぁ、若くなっている分だけ、肌の調子は少しいいけど、自慢できるのは、それくらいだ。
何とか結婚できたけど、恋愛経験はそんなにない。告白された事はあるが、所謂ストーカーだった。
だから、自分が色恋の相手にされるような対象ではないのは、自分自身が一番よく分かっている。
だけど、男の人が、性欲を発散させる、その対象になると言われた。考えたことはなかったけど、間違いなく私はそんなものにはなり得ないし、そもそもなりたくもない。
だけど…
なりたくはないけど…
実弥さんの…
実弥さんのその対象には、私はなれるのだろうか。
色恋の相手にはなれないから、そんな関係性でもいいかもしれないと、考えてしまう。
昨日、自分に言い聞かせた筈なのに。自分の都合のよさに嫌気がさしてくる。
押し倒された時の実弥さんは、いつもと違う、実弥さんだった。
いつかの時の実弥さんを思い出させる姿で、恥ずかしいが、自分の方が我慢できなくなるところだった。
だから、すぐに止めてくれて良かった反面、残念だと言う気持ちも大きかったのは事実だ。
だから、「私が襲う」なんて、言ってしまったのだ。
三大欲求のうち、私は食欲、睡眠欲が突出していて、性欲は一番少ない欲だ。妊娠出産してからは特に減ったと思う。
旦那ともずいぶんとご無沙汰だ。
だけど、なくなった訳ではないので、恥ずかしいが、したいと思う時もある。
だけど、誰でもいい訳じゃない。それは好きな相手とだ。
ここにいる間は無理だろう。
そもそも不倫になるのではないか?でも、世界が違うから、そこまで深く考えなくていいのか?そんな事を考える前に相手がいないだろう。
頭の中を色々な事がぐるぐると回っていく。