第15章 岩柱
実弥さんに遅い昼食を届けると、急いで部屋に戻る。
いつも寝る時や着替える時にしか閉めない襖を閉める。
そして、机に突っ伏し、溜め息と共に吐き出す。
「何なのさ、もう…天然たらしめ…」
先程の実弥さんの部屋での事を思い出す。
寝てしまったのは、本当にどうかしてると自分でも思う。そう思うけど、寝てしまったのは、もう仕方ないじゃないか。寝てしまってたんだから。
ちゃんと寝てたと思っていたけど、それ以上に昨日の自分は物凄く疲れていたのだろう。寝足りなくて、寝てしまったんだから、もう仕方ないといか言いようがないじゃないか。
それに、あそこから動けなかったのは、実弥さんのせいでもあるのに。
そこは棚に上げて、私ばかり責められた気がする。
「はぁーっ。それにしても、あれは反則だよ」
溜め息と共に、また声が漏れる。
あまりにも自然な形で押し倒されてしまった。
その事を思い出し、また顔に熱が集まるのが分かる。
こっちの世界に来るまでは、実弥さんに押し倒されるようなシチュエーションを想像したことはあった。何なら、それ以上の事まで、だ。
こうだったら、と言う妄想は留まることを知らなかったが、あくまでも想像の域を越えるものではない。そんな事はあり得ないと思った上での、妄想だ。
だけど、実際の破壊力は半端なかった。よく、取り乱すことなく対応できた私を褒めてほしい。
あんな事をさらっとやれるなんて、天然たらしは本物だ。風柱じゃなく、たらし柱に改名してもいいんじゃないのか。
そうだとしても、おばちゃん相手に、本当にやめて欲しい。
流石に、実弥さんが、二次元から三次元に変わってからは、そんな妄想することすらなかった。生活に慣れるのに精一杯で、考える余裕すらなかったのが事実だ。
それに、落ち着いた今は、敢えて考えないようにしている。今のままの関係を継続させたいからだ。実弥さんとは同居人で、それ以上でも以下でもない。
実弥さんは、本当に鬼殺だけで生活しているような人だ。生活する中で、普通の若い人達が経験するような事は、全くない事が分かった。興味もだ。