第15章 岩柱
【実弥side】
拍子抜けする程、あっさりとだ。
その落差に自分の方が追い付かず、何故かノブの後ろ姿を追う。
廊下に出たところで、あっと声がする。何か思い出したようで、振り向いたノブと目が合う。
「実弥さん、お昼ごはんどうします?」
さっきまでの会話はなかったように、いつもと変わらない内容を、いつもと変わらない笑顔で聞かれる。
「…今日は部屋で食べる」
「じゃあすぐにお持ちしますね」
そう言いながら部屋から出ていくノブの後ろ姿を追う。見えなくなってから、大きく溜め息を一つ吐く。
何でこんなに振り回されているんだァ。
理解できない感情や気持ちもある。だが、いくら考えた所で、答えは一つ。
あいつが、ノブがおかしいからだァ。
そう結論付ける。
布団を片付けていれば、ノブはまた笑いながら部屋に入ってくる。それが当たり前かのように。
俺もいつからノブがいるのが当たり前と思うようになったんだァ。
遅い昼飯を食べながら、無意識に鬼殺の事を考え始める。
ノブの事は、自分でも気づかないうちに、蓋をしていた。