第15章 岩柱
【実弥side】
「そうだとしても、私なんかは相手にしようとは思いませんよ。蜜璃ちゃん位、胸が大きかったり可愛かったら別ですけどねぇ」
色恋であれば、そうだろうが、男はそれだけじゃねぇ。ノブが自分の事をどう思っているか、分からねえが、そこそこの見目だ。血気盛んな若い奴が無防備にヘラヘラしているノブを見れば、間違いなく襲われるのが、想像できる。
「…お前なァ。ただの捌け口にするだけなら女であれば、どんな顔だろうと体だろうといいから、隙を見せればお前もヤられるんだからなァ」
釘を刺すように、強めに言うが、全く通じてないような返答をされる。
「心配してくれてるんですね。ありがとうございます。そうですね。取りあえず寝ないようにがんばりますね」
全く、分かってるのか分かってないのか。
最初に倒れていた時も、見つけたのが俺じゃなかったら、好きにされていたかもしれねぇのに。
いくら記憶が四十とは言え、女だぞ。この危機感のなさはどこからくるんだァ。
「…ハァッ」
何を言っても、暖簾に腕押し状態の会話に、どう言えば理解するのか分からなくなり、溜め息が漏れる。
「ん?実弥さん、どうしました?」
そう言いながら、躊躇なく、顔を覗き込んでくる。こいつの距離感はやっぱりおかしい。
そう思うと、体が勝手に動き出す。右手でノブの左手を掴んで少し引き、同時に左手で肩を軽く押せば、もう俺に押し倒される。ノブに跨がり、両手を拘束すれば、完成だ。
「うわっ。痛いです~。しかも、実弥さん、近いッ!近いです」
顔を真っ赤にして視線を反らすノブを見て、加虐心が擽られる。
「少しは分かったかァ。簡単に襲われるぞォ」
「分かりました。流石に分かりましたよ。けど、実弥さんなら、襲われてもいいんですけどねぇ」
真っ赤な顔のまま、逸らしていた目線をこちらに向け、軽く微笑んで言われる。
その言葉と表情のちぐはぐさに、俺の下半身がドクリと脈打つ。
駄目だァ。このままじゃ、俺の方がもたねェ。