第15章 岩柱
【実弥side】
全くこいつがわからねぇ。
元々訳も分からず、突然居候させる事になった。流石に幾月か生活する中でノブの事は何となく分かっていたと思っていたが、昨日の話を聞いて分からなくなった。
掴めそうで掴めない。
生活が楽になったのは事実。
だが、こいつに振り回されているのも、事実だ。
昨日も、そして今日もだ。
モヤモヤと分からない感情が沸き上がる。
まただ。
何なんだ!イライラとしてくる。
だが、考えるのはやっぱり性に合わねェ。
「おいっ!ノブ、起きろ」
目の前のノブを起こす。モヤモヤとした感情を晴らすかのように、手をノブの頬に伸ばす。イライラした気持ちのまま、頬を摘まむ。
思いの外、頬の柔らかさが気持ちよく、何度も摘まめば、さすがに目が覚めたようだ。
「実弥さん、痛いです」
第一声がこれだ。
「なんで、お前がここで寝てるんだァ」
「えっ?嘘?寝てました?」
「お前なァ。寝てたから起こしたんだろうがァ!」
「だって動けなかったんですから、仕方ないんですよ。それにしても、また寝てたなら、私、今日は寝過ぎですね」
笑いながら言うノブに違和感が走る。
「寝過ぎだァ?」
「はい。今日、悲鳴嶼さんのお屋敷に行く、行き帰り、寝ちゃったんですよ~」
ヘラヘラ笑いながら言うノブの言葉に耳を疑った。
「はァ?寝ただとォ?」
「思いの外揺れが気持ち良くて。流石に斉藤さんから呆られましたね~」
「お前、本当に馬鹿だろッ!少しは危機感を持てェッ!」
「ん~それ、斉藤さんにも言われたんですけどね。私、おばちゃんですし。相手にされないですよ~」
斉藤にも言われているのか。全くどうしようもねぇ。だけど、どこからその相手にされないという自信は沸いてくるのか。いくら記憶は四十とは言え、女じゃねぇかァ。
「はぁッ。お前は四十の記憶しかないかもしれねぇが、見た目は二十歳位にしか見えねぇんだぞォ」