第15章 岩柱
【実弥side】
目が覚めた。
目が覚めたが、夢かと思った。
目に映る光景が、異様すぎて、この状況が把握できない。
部屋にいるはずのないノブが目の前にいて、そのままの状態で寝ている。
しかも、俺がそのノブの手を掴んでいる。
何が起きた?
寝起きはいい方だと思っていたが、全く状況が理解できない。
一度目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をする。
頭の中で、整理し始める。
ノブが出掛けてた後、寝ようとしたが何故か寝れなかった。だから、一度稽古をし、そして、寝た。かなり寝たと思う。最近では一番スッキリとしている。
だけど、なぜこいつがいる?俺は何でこんなことをしているんだ?
記憶を手繰り寄せていく。
ぼんやりとした記憶の中に、声をかけられたような気がするが、曖昧だ。
ただ、何となく安心感があり、いつもより深い眠りだった。
母親をこの手で殺めてしまったあの日から、あまり深くは寝れない。いや、寝ないようにしているのかもしれない。
あまりにも疲れがたまったときは別だが、基本眠りは浅い。すぐに起きれるように気を張っていることもあるだろう。
未だに掴んだままだった手を離し、布団から起き上がる。温かさが急になくなり、頭もスッキリとしてくる。
ノブはこくんこくんと船を漕ぎながら、器用に座ったまま寝ている。
「こんな体勢でよく寝れるなァ」
昼はもうとっくに過ぎているんだろう。勝手に部屋に入るなと言っていた筈だが、既に二回目だ。
だが、ノブがここに留まっているのは、俺が原因だろう。なぜそんな状況になったかは分からないが、俺が手を掴んでいたのは事実だ。
動くに動けずはわかるが、なぜ寝る?いや、なぜこの状況で寝れる?
未だに船を漕ぐノブの顔を見る。
うっすらと目の下にクマがある。昨日あまり寝れていないのかもなァ。昨日は色々とあったし、振りまわされた事を思い出す。