第15章 岩柱
「いやいや、実弥さんとはお館さまのお屋敷に行っただけで、他はどこにも行ったことことないですよ。どこかお出掛けしてみたい気はあるんですけどね。
そうそう。昨日初めて、隣町に蜜璃ちゃんとお出掛けしたんです。それでカツレツ食べたんですよ」
「おお。カツレツか。うまいよな。お前、友達できたのか」
カツレツを食べたことも、友達ができたことも、斉藤さんにとっては初耳だろう。
友達ができたことには、喜んでくれているのだろう。斉藤さんの顔が綻んでいる。
「はい。蜜璃ちゃん、とっても優しくて、可愛いんですよ。なのに、とっても力も強くて、とっても強いんですよ」
本当に力持ちだったなぁ。そんな風に蜜璃ちゃんのことを思い浮かべながら話す。
「そうか。…ん?蜜璃ちゃんって、鬼殺隊のやつか?」
強いという単語に、斉藤さんが反応したようだ。普通は女の子に、強いとはあまり言わないだろう。
「はい。斉藤さんも知ってるんじゃないですか?甘露寺蜜璃ちゃん」
「甘露寺……おい。もしかして、恋柱さまじゃ…」
斉藤さんは、甘露寺と一言呟くと、さっきまで笑顔だったのに、ビックリするくらいに強ばっている。
蜜璃ちゃんと言えば恋柱の甘露寺蜜璃ちゃんだろう、と当たり前のことじゃないかと思ったのは、口に出さない方がよさそうだ。
「そうですよ。あんなに可愛いのに、柱だなんて驚きですよね。胸も大き…」
「おいッ!お前、柱だよ。知ってるに決まってるだろ。柱なんだよ。強いに決まってるだろ。ってか、何でお前が恋柱さまと友達なんだよ。はぁ?訳わかんねぇ」
斉藤さんは本当に訳が分からなくなったようだ。早口で捲し立てられる。
私が蜜璃ちゃんと友達だったらおかしいのか?
やっぱり柱は鬼殺隊の人にとっては、すごい人なのだろう。実弥さんの時もそうだったし。
私は漫画というものを通して見ていたことと、元々年齢が年上ってこともあるのだろう。柱がそんなに怖い存在とは思えないのだ。
鬼に対しての殺気とかは怖いと思う。初めは実弥さんの雰囲気は怖かった。でも慣れた。普段の彼らは、私達と全く変わらない。
だから、こんな答えしか出ない。
「え~友達は友達ですよ。ほら、年齢的にたぶん近いから仲良くしてくれてるんじゃないですか」