第15章 岩柱
蜜璃ちゃんと行った隣町とは違う場所のようだ。いつも買い物に行く場所と同じ程度、という印象だ。
町の近くになると、斉藤さんは私を下ろした。二人で並んで話ながら歩いていく。内容はほぼ今日の悲鳴嶋さんとのことだ。
10分程歩いただろうか。斉藤さんが指差しながら言う。
「ほら、そこだ」
「そういえば、何屋さんですか?」
「蕎麦だ。あそこの蕎麦はうまいぞ」
「わぁ、嬉しいです!」
そんなことを話していれば、もう店の前だ。斉藤さんは慣れた様子で、店の扉を開け中に入り、当たり前のように席に座る。私はその後をついていく。
斉藤さんの向かいに座り、回りを見渡す。三人程、お客さんがいるが、みんな一人で入っているようだ。
ふわりといい匂いが鼻をかすめる。それでなのか、お腹がぐうっとなる。
斉藤さんを見たが、音には気づかなかったようだ。緊張していてあまり感じなかったが、実際はずいぶんとお腹が空いているようだ。
「ノブ、お前何にする?」
斉藤さんは聞くが、メニューも見あたらないので、何を頼めるのかも分からない。そんなときは斉藤さんにお任せだ!
「何があるかわからないので、斉藤さんと一緒の物をお願いしたいです」
「分かった。親父、かけ蕎麦を二つ」
斉藤さんは厨房にいる親父さんに向かって注文する。
「ああ」
親父さんは一言だけ答えると、黙々と蕎麦をゆがき始めた。
蕎麦職人は無愛想な人が多いのだろうか。私の偏見かもしれないが、何だか蕎麦を作ってる人は、頑固で無愛想な人が多い印象だ。
ここの親父さんも愛想はいいとは言えない。
サービス業だから、少しは愛想よくしないと、お客さんも来ないのでは?と少し心配になる。
でも、料理も上手な斉藤さんが通うくらいだ。美味しいに違いない。
また、回りを見渡す。メニューなどもなく、何かが飾られているわけでもない。本当に飾り気もない。初めてだと、何のお店なのかもわからない。
「おい、キョロキョロし過ぎだ!ちょっとは落ち着け!」
斉藤さんから怒られてしまったが、外食自体が久しぶりで、どうしても色々と気になってしまう。
「あ、ごめんなさい。お店でごはん食べるの、二回目なので。何か落ち着かなくて。すみません」
「不死川さまとどっか食べに行ったのか?」
斉藤さんは少し驚いた顔をしている。