第15章 岩柱
あまりの振動に、山を降りた所で声をかける。
「斉藤さん、ちょっとだけ、休憩させてください。ちょっと気持ち悪いです」
「はぁっ?吐くなよ。ほら、ここならいいだろ」
そう言うと、木の木陰になっている場所で下ろしてくれた。そのまま座り込む。
「はぁ~っ。かなりの振動でしたね。ちょっと休憩したら治りますから。斉藤さんも休んでください」
「休むほど走っちゃいねぇがな」
「そうなんですか。やっぱりすごいですね、鬼殺隊のみなさんは」
そう言い、ゆっくりと木にもたれかかり、目を瞑る。ゆっくりと深呼吸すれば、段々と落ち着いてくる。
「大丈夫か、ノブ?」
五分程はそのままの体勢でいれば、流石に斉藤さんも気になって声をかけてくれる。
ゆっくり目を開ける。もう大丈夫そうだ。
「はい。もう大丈夫そうです。すみませんでした」
「仕方ないさ。そういや、もう昼になるけど、屋敷に帰って食べるか?」
「実弥さんのお昼は準備してきたので、せっかくだから食べて帰りましょう。どこか美味しい所はありますか?私、全く知らないんで」
「じゃあ、ちょっと遠回りになるが、食べて帰るか」
「はーい。じゃあ、急いでいきましょ。何かお腹空いてきましたよ」
お昼ごはんと言われれば、何だかお腹が空いている気がしてきた。
「さっきまで気持ち悪いとか言ってたのに、もう腹が減ったって。勝手だなぁ」
「いいじゃないですか。斉藤さんもお腹空いたんでしょ?行きましょ」
「ああ。ほら、行くぞ」
「よろしくお願いしま~す」
気持ちはすっかりお昼ごはんだ。どこに連れてってくれるのだろうと、考えながら、斉藤さんの背中に背負われる。
「もう慣れてるじゃねえか。それか昼飯のことしか考えてなかっただろ。急いで行くから、舌噛むなよ」
くくくっと笑いながら、斉藤さんは言う。
図星だ。
あまりにも言い当てられて、この人は人の気持ちが読めるんじゃないかと、思ったくらいだ。
そんなことはないが、流石に恥ずかしくて、何も反論はできなかった。
それに加え、走り出してしまった斉藤さんは、速くて、喋ることができなかったのだ。