第15章 岩柱
「そうですねぇ。実弥さん、ものすごく怖い顔してますもんね。目付きも悪いし、口も悪いし。いっつも怒られてますよ、私。だけど、怖くはないですよ。実弥さんはとっても優しい人だから。だいたい私が何かやらかして、怒られてますけどね。
でも、鬼狩りに行くときの実弥さんの雰囲気は、怖かったですね。あれって、殺気なんですかね?でももう、慣れました」
実弥さんは見た目も、口調も怖いから、多分怖がられるだろう。私も単行本での知識がなければ、実弥さんは怖かったと思うし、優しさに気づくまでに時間がかかっただろう。
だけど私は知っていた。だからこそ、一緒に暮らしていて、優しさが身に染みてよく分かるのだ。
「三井は、不死川のことを、よく分かっているようだな」
「そうですか?でも、実弥さんの事、大好きですから嬉しいです。あ!でも、色恋の好きではないですよ。実弥さんには、もっと可愛らしくて素敵な女性が現れますから。それまでは、私ができる範囲でお世話はさせて頂こうと思ってますけどね」
自然と顔が綻ぶ。
「それは色恋の好きではないのかね?三井」
そんな私に悲鳴嶼さんは何度も確かめるように尋ねられる。確か、悲鳴嶼さんは人の色恋によく気づいていたなぁ、と思い出す。
「違いますよ。私なんかそんな風に思うことすら、おこがましい…。実弥さんに申し訳ないですよ、こんなに怪しい奴ですから。
そう!実弥さんにも、鬼殺だけでなく、もう少し実弥さん自身の時間を作るよう言ってるんですよ。ずっとお屋敷にいても稽古やなんだで、ずっと鬼殺のことばかりで…。少しは風柱ではなく、ただの不死川実弥でいる時間も作ってくださいって言ってるんですけどね。
あ!悲鳴嶼さん。もし実弥さんに好い人ができたら、ここで居候させて頂けますか?」
追い出された時の住む場所の確保はしておきたい。我ながらいい考えが浮かんだと思っていたが、返事は全く違うものだった。
「三井はころころと話が変わるな」
「すみません。どうも頭に浮かぶと言ってしまいがちで…」
いつも、言われていなぁと思い出す。主語がない、話が飛びすぎ…
あれだけ緊張していたのに、実弥さんの事を話しているうちにいつもの自分に戻ってしまったようだ。