第15章 岩柱
悲鳴嶼さんの前に座り、西瓜を下ろす。
「本日はお忙しい中、お時間を作って頂きありがとうございます。お館さまの計らいで、不死川様のお屋敷でお世話になっております、三井ノブと申します。今後何かあれば、他の柱の皆様にご迷惑をおかけする事があるかもしれませんので、ご挨拶に伺いました」
「お館さまから聞いている。不死川の嫁だと」
「他の柱の方からも言われますが、嫁ではありません。お館さまも嫁とは言われてないと思います」
「だが、お館さまから不死川の世話をするように言われたのだろう」
「そう言われましたが、嫁とは言われてません」
「まぁ、いい」
柱の人達はどうしても実弥さんの嫁にしたいのだろうか。お館さまは世話をするように言ったかもしれないが、何故嫁に直結するのか…全く分からない。
悲鳴嶋さんも、若干不服そうな感じだったが、平行線を辿ると思ったのだろうか、この話しは終わった。
気持ちを切り替え、持ってきた西瓜を前に出しながら、話す。
「それと、お口に合うか、とは、思いましたが、西瓜をお持ちしました。お納めください」
「ああ。ありがとう。ありがたく頂戴するとしよう。さて、三井、挨拶だけならこれで終わりだが、私からも質問してもよいだろうか」
悲鳴嶼さんの目が鋭くなり、緊張で心臓がドクドクと早くなる。蛇に睨まれた蛙の気分だ。目は見えてないと分かっていても、全て見透かされているようで、変な汗が止まらない。
「はい。お答えできることは、お答えします」
何とか声を出し答える。
正直に話さないと、信用してもらえないだろう。
「質問は二つだ。お前は何者だ。なぜここに来た」
「何者…ですか?」
「そうだ。お館さまは三井の事をお認めになっているのだろうが、私にはどうもお前の存在が掴めない。三井という人間は存在するが、かなり違和感があるのだ。私はお前の存在が信じられない」
悲鳴嶼さんの質問に、どう答えようか悩んだが、答えは一つだ。目が見えないからこそ、他の五感で感じとるのだろう。私の異質さが伝わったようだ。
「ふふ。何だか安心しました」
「何故だ?お前の事を疑ってるのだぞ」
「それが安心した理由です。私の事は何かお聞きになってますか?」
「いや」
自分の話せる範囲を、ゆっくりと話し始めた。