第15章 岩柱
ガクンと頭が揺れ、斉藤さんの肩に顎をぶつけ、目が覚めた。
「痛い…」
「山に入ったら揺れるって、言ってただろう。この山に入れば、岩柱の悲鳴嶋様の屋敷までもうすぐだぞ。それにしても、お前、この状況でよく寝れるよなぁ」
「だいたいどこでも寝れますよ。私の得意技ですよ」
「何なんだ、その得意技は。そういや、お前、後藤の時も寝てただろう」
斉藤さんには知られたくなかったのに。
「後藤さんから聞いたんですか?」
「そうだよ。だいたいお前、少しは気を付けろよな」
「そうですね。運んで貰ってるのに、寝ちゃいかんですよね。いや、私も分かってるんですけどね。睡魔には抗えません」
「いや、そういう意味じゃねぇよ」
「え?他に何か意味ありますか?うわっ!」
ガクンと揺れ、斉藤さんの肩に顎をぶつける。かなり痛い。揺れるのは仕方ないから、最初から顎を斉藤さんの肩につけ、回す手もしっかりと掴む。
「斉藤さん、取りあえず着くまで頑張って起きてますけど、揺れるとぶつけるので、くっつかせて下さいね~」
顎をのせた状態で斉藤さんの耳元にであろう所に向かって喋り掛ける。
「…煩いッ!もう喋るなッ!」
「はぁい」
何故か怒られたので、それ以上は喋らず、しっかりと斉藤さんにしがみつく。ガクンと何度もなり、うわっとかうえっとか言ったが、しっかりとしがみついていたお陰か、最初の頃のような痛みは伴わなかった。
山に入ってからは、思ったよりも早く着いたように感じる。突然山道が開け、屋敷が姿を表した。思ったよりもこじんまりとしている。
「ほら、着いたぞ。降りろ」
そういう声をかけられ、下ろされる。山道だったからか、少しふわふわとした感覚が残る。
「斉藤さん、ありがとうございます」
「さっさと行くぞ」
そう言われるが、まだ歩けそうにない。
「斉藤さん、ちょっと待ってもらえますか?ふわふわして、うまく歩けなくて」
「何やってんだ、お前は」
呆れた顔でそう言い、斉藤さんは私の腕を掴む。腕を引っ張ってもらい歩き出す。5mも歩けば、感覚は戻った。
「斉藤さん、もう大丈夫そうです」
「お前、手がかかりすぎだろ」
「すみません…」
「ほら、すぐそこだ。行くぞ、ノブ」
「はい!何から何まですみません」
そう言いながら、玄関まで歩いていく。