第15章 岩柱
【実弥side】
「おいッノブ!煩いッ!あと、何やってんだァッ!」
苛立ちのまま怒鳴れば、斉藤はスッと姿勢を正し、深々と頭を下げる。
「おはようございます、不死川様。大変申し訳ございません。本日岩柱様のお屋敷までのお役目をさせていただきます」
斉藤のすぐ側でノブは馬鹿みたいに顔が緩んだまま返事をする。
「ごめんなさい、実弥さん。あまりにも久しぶりで嬉しくて」
「知っている奴とは言え、お前は何をやってんだァ」
苛立ちは収まることなく、怒鳴りつける。
「大変申し訳ございません、不死川様ッ!」
斉藤に対して怒ってはないが、流石に斉藤は焦って、何度も深々と頭を下げる。
怒られている張本人は全く意に介した様子もなく、答える。
「え?取りあえず感動の再会と、ちょっと頭突きを…」
あまりにも突拍子のない答えに、苛立ちは一気に呆れに変わる。
斉藤を見れば、流石に呆れ、一言呟く。
「…相変わらず、馬鹿だな、お前」
「こいつの馬鹿さ加減は変わらねぇよ、斉藤」
「そのようですね」
斉藤とノブの馬鹿さ加減にお互い納得していたが、この訳の分からない状態にした張本人が会話に割って入ってくる。
「あの~、二人で納得しないでくださいよぉ」
「煩いッ!さっさと行ってこいッ!」
この状況に終止符を打つかのように、強めの口調で送り出す。
「不死川様、大変申し訳ございません。それでは失礼いたします。おいっ。ノブ行くぞッ」
焦った斉藤はノブの手を引きながら、外にいこうとする。それを見て、収まっていた苛立ちが再燃する。
「はぁい。煩くしてすみませんでした。斉藤さん、そんなに手を引っ張らないでくださいよ。私、台所から出ますから、外で待っててください。荷物も取ってきますから」
「分かった。早くしろよ」
「はぁい!」
二人のやり取りに苛立ちを覚えながら、でも、何故かその場から動けないでいた。