第15章 岩柱
【実弥side】
昨日はノブと甘露寺のせいでゴタゴタしたが、俺の一日は変わらない。
今日もただの雑魚鬼だった。何で俺は上弦どころか、下弦の鬼にもかすりもしないのか。
そんな事を考えながら屋敷に戻れば、ノブはもう起きていて、風呂の準備まで終わらせている。風呂からあがれば食事の準備もだ。
雑魚鬼とは言え、一晩中動けば体は疲れる。何だかんだで、風呂や食事の準備をしなくていいのは、やはり助かる。
食べ終わると、ノブが話し出す。
「実弥さん、今日もですが、出かけてきますね」
昨日の今日でどこに行くのかと思い、尋ねれば、悲鳴嶼さんのところに、挨拶に行くと言う。
わざわざ行くことはないとは思うが、他の柱に世話になるかもしれないからと言われれば、納得するしかない。俺もお館さまから言われて居候なんてさせてやってるだけだ。
お館さまが他の柱の所に行くよう言えば、すぐに出ていくだろう。
居候。
所詮、ノブとは、それだけの関係だ。
初めて会う悲鳴嶼さんの事を気にしていたから、ちょっとからかってみた。何でも真に受ける所は面白い。
部屋に戻り、一息つき、刀の手入れをする。
悲鳴嶼さんの所に行くと聞いて、玄弥の事が思い浮かんだ。まぁ会うことはないだろうから、気にすることはないだろう。
「おはようございます。お迎えにあがりました」
聞きなれた声が玄関からする。今日は斉藤かァ。
「おう。久しぶりだな、ノブ。元気にしてたか?」
「斉藤さあぁ~ん!お久しぶりです!本当会いたかったですよ~!」
斉藤に気づいたノブが、喋りながらドタバタと走って行く音が響いたと思えば、斉藤の怒声が響く。
「いってぇ!何やってんだよッ!お前はッ!」
「ごめんなさい。いや~斉藤さん、お久しぶりです。いや~本当に嬉しいです。お元気でした?本当に斉藤さんですよね?いや、嬉しい~。だけど頭が痛いです~」
何が起きたのかと部屋から出て見れば、斉藤と手を繋ぎ、楽しそうなノブが目に入る。その姿に苛立ちが沸き上がる。