第15章 岩柱
「おいッノブ!煩いッ!あと、何やってんだァッ!」
流石に煩かったのだろう。実弥さんが部屋から出てきて怒鳴られる。
顔は見なくても分かる。声が…うん、怒ってるなぁ。
「おはようございます、不死川様。大変申し訳ございません。本日岩柱様のお屋敷までのお役目をさせていただきます」
斉藤さんは深々と頭を下げながら早口で答えている。その様子を横目に、久しぶりに斉藤さんに会えた嬉しさで、私は顔が緩みっぱなしだ。
「ごめんなさい、実弥さん。あまりにも久しぶりで嬉しくて」
「知っている奴とは言え、お前は何をやってんだァ」
「大変申し訳ございません、不死川様ッ!」
斉藤さんは焦って、何度も深々と頭を下げる。
「え?取りあえず感動の再会と、ちょっと頭突きを…」
何をやっていたか、正直に答えたのだが、二人ともすごく呆れた顔で見ている。
そして、斉藤さんが一言。
「…相変わらず、馬鹿だな、お前」
「こいつの馬鹿さ加減は変わらねぇよ、斉藤」
「そのようですね」
「あの~、二人で納得しないでくださいよぉ」
「煩いッ!さっさと行ってこいッ!」
「不死川様、大変申し訳ございません。それでは失礼いたします。おいっ。ノブ行くぞッ」
「はぁい。煩くしてすみませんでした。斉藤さん、そんなに手を引っ張らないでくださいよ。私、台所から出ますから、外で待っててください。荷物も取ってきますから」
「分かった。早くしろよ」
「はぁい!」
玄関から引きずり出されそうになったが、まだ持っていない。ましてや草履も履いてないのだ。これじゃ、行けない。斉藤さんは実弥さんに一礼すると、そそくさと外に出ていってしまった。
部屋に戻ろうと振り返ると、まだそこに実弥さんが立っていた。ものすごく不機嫌だ。