第15章 岩柱
「ああ。失礼のないようになァ。怒らせたら…帰ってこれねぇかもなァ」
「ええっ!どうしよう。失礼ばかりしそうです、私。不安しかない…帰ってこれなかったら、悲鳴嶋さんに怒られてるか山に捨てられてるかもしれません…」
途端に不安が押し寄せる。多分捨てられたりはないと思うが、失礼をして怒られる可能性は高い。
悲鳴嶼さんから怒られる姿が目に浮かぶ。
「ハハッ。精々気を付けろォ」
「…わかりました。がんばります。そういえば、何か悲鳴嶋さんにお伝えすることはありますか?」
「いや、ねえな」
「わかりました。だいぶ不安ですけど…できるだけ頑張ってきます」
そんな返事で締め括られ、実弥さんからは特に不振がられることはなかったと思う。気づかれれば、怒られるだろうし、ここに置いて貰えないかもしれない。
でも、やると決めたからには、やる。
そう思いながら、片付けや準備をする。
ある程度終わった所で部屋に戻り、身なりを整える。普段着で行くから、髪の毛を結び直すくらいだ。
ふう、と一息つき、腰をおろす。どんなことを話そうかと考えていると、玄関から音が聞こえた。
「おはようございます。お迎えに上がりました」
隠の人が来てくれたようだ。どことなく聞いたことのある声だ。急いで部屋から出ると、玄関には斉藤さんが立っていた。
「おう。久しぶりだな、ノブ。元気にしてたか?」
「斉藤さあぁ~ん!お久しぶりです!本当会いたかったですよ~!」
駆け足で斉藤さんまで行くが、玄関の段差を上手く降りられず、転びそうになり、斉藤さんの腹部に頭突きをする形になる。
「いってぇ!何やってんだぁッ!お前はッ!」
「ごめんなさい。いや~斉藤さん、お久しぶりです。いや~本当に嬉しいです。お元気でした?本当に斉藤さんですよね?いや、嬉しい~。だけど頭が痛いです~」
全く斉藤さんの小言はスルーし、嬉しさから斉藤さんの両手を繋ぎ、ひたすら話しかける。