第15章 岩柱
ある程度準備が済んだ頃、実弥さんが帰ってきた。
「あ、実弥さん。お帰りなさい。お風呂準備できてるのでどうぞ」
「あぁ」
最近、何となくだが、鬼と闘った時が分かるようになった気がする。
毎日毎日、鬼と遭遇するわけではないようだ。ほぼ毎日出ていくが、主に見回りや警備といった面が多いのだろう。
そんな実弥さんが、時々違うにおいを纏って帰ってくる時がある。鼻の悪い私が何となく分かる位だから、もしかしたらもっとしっかりにおうのかもしれない。
最初はどこかにおいの強い場所にいたのかと思っていた。
だけど、実弥さんの表情とか見ていると、何となく鬼と闘ったのではないか、という考えに至った。
鬼は消えるからにおいがすることはないのだろうけど、何となくいつもとにおいが違うのだ。
炭治郎だったら、違いが分かるのかもしれないなぁと思う。
雑魚鬼であれば、一刀両断だろうから、隊服が汚れることはない。いつも通り帰ってくる。
だから、何となく思うだけだ。確証はない。
今日もそうだ。
鬼と闘ったのだろう。出発した時と全く変わらないけど、やっぱりどことなくにおいがする。
実弥さんに聞いたことはないから、本当にこれが正解なのかも分からない。
ただ、そんな日の実弥さんの顔は、どことなく厳しい。でもお風呂から上がってくると、その顔がいつもより安らぐのだ。
強い気持ちで闘ってるけど、やっぱり人間だ。鬼を斬ることで、お母さんのことを思い出してないだろうかと、思う。そうであれば、辛くないはずはない。
そんなことを考えると、やっぱり実弥さんには、屋敷の中くらいは実弥さんらしく過ごして貰いたいと強く思うのだった。