第14章 お出かけの続きを
台所に戻ると、机には西瓜とお土産が置かれている。夕御飯の準備もしなきゃと見回せば、ご飯は準備されている。
実弥さんが炊いてくれたのだろう。
取りあえずこの格好だと、何もできない。一旦部屋に戻り、着替えを済ませ、台所に戻る。
手早くおにぎりを握り、漬け物を切る。
お盆に載せ、実弥さんの部屋の前で声をかける。
「実弥さん、夕食お持ちしました」
少し待てば、実弥さんが襖を開ける。お盆を持たれる前に話始める。
「実弥さん、ご飯炊いて下さっててありがとうございます。助かりました。それと、お迎えにも来てくれたし、話もたくさん聞いた貰いましたし。西瓜もなくなっちゃってごめんなさい。本当にありがとうございました」
そう言い、頭を下げる。
「本当だァ。その分、しっかり働けよォ」
実弥さんはそう言いながらお盆を受け取る。
「はい。がんばります!だから、ご褒美も考えてて下さいね」
顔をあげて返事をする。ご褒美、の部分は少し強調してだ。
「お前のがんばり次第だァ。まぁ、独り言を言わずに屋敷の事をやれれば、連れていってやってもいい」
できないと分かっていて、実弥さんは言っているのが分かる。ニヤニヤとした表情で、楽しんでいるのだ。
「えぇッ!それは絶対無理じゃないですか~」
「無理だから言ってんだァ」
更にニヤリと笑う。いじめっ子だな。
「…がんばります」
「精々がんばれよ」
ニヤニヤとした顔のまま、右手で私の頭をポンポンと二回叩く。そして、すぐに襖を閉められた。
叩かれた部分に意識が全部持っていかれる。
そして、熱も集まる。
部屋に戻り、呟く。
「やっぱり天然のタラシだよなぁ…」
窓からの風が頬を掠めていく。
心地よい。
だが、顔の熱はまだまだ引きそうになかった。