第14章 お出かけの続きを
もう少しで屋敷に着くという所で、蜜璃ちゃんが戻ってきた。
「ノブちゃーん、不死川さーん、遅くなってごめんねぇ」
「蜜璃ちゃん、おかえり。ありがとうね。実弥さんが来てくれたから、助かったよ」
「ありがとう、不死川さん。やっぱり行ってくれたのね」
ニコニコしながら蜜璃ちゃんは言う。
反対に実弥さんはしかめっ面だ。
「お前らに振り回されっぱなしだァッ!次は行かねえからなァ!」
そんな話をしながら、炊事場に入り、机に西瓜を置く。
「じゃあ、来たばかりだけど、そろそろお館さまの所に行ってくるわね」
帰りに考えていたことを実弥さんに確認を取る。
「あ、待って。ねぇ、実弥さん、蜜璃ちゃんにもう一玉あげてもいいですよね?二人で半分もお腹いっぱいになるし、すぐに悪くなりそうですし」
「あぁ。あとはお前らで決めろォ」
そう言い残して、実弥さんは部屋に戻っていく。
「ええ?ノブちゃん、半分にするって言ってたじゃない?」
「よくよく考えたら、ここには二人しかいないし、今半分にしても、今からだと食べれないし。それよりも蜜璃ちゃんに食べて貰った方がいいから。うちが一玉貰っても、食べれないし」
冷蔵庫もないのだ。半分にしてしまえばすぐに食べないと悪くなる。しかももう夕方だ。お裾分けもできない。
「いいの?」
蜜璃ちゃんは申し訳なさそうにしている。
「うん!遠慮なく貰って!今からお館さまの所まで行って貰わないといけないしね。それも含めて、よ。お願い、貰って~!」
手を合わせて、お願いの仕草をしてみれば、蜜璃ちゃんの顔が笑顔に変わる。
「うん。分かったわ。ありがとう、ノブちゃん」
「感想は聞かせてね。本当に今日はありがとう。とっても楽しかったよ。また一緒に行ってくれる?」
「ええ。私も楽しかったし。また行きましょうね。じゃあ、お館さまの所に行ってくるわね。さようなら、ノブちゃん。またすぐにお手紙書くわ~」
蜜璃ちゃんは机に置いていた西瓜を二つ手に取り、外へと向かう。
「うん。楽しみにしてる。気をつけてね。さようなら」
私の言葉に蜜璃ちゃんはにっこりと笑うと、くるッと背を向け走り出す。両手に西瓜を持っているのに、すぐに見えなくなった。
空を見れば、もうずいぶんと陽が落ち始めていた。