第4章 お館さま
「手伝いますね」
茶碗にご飯をよそう。実弥さんはお味噌汁をお椀にいれる。
台所から上がってすぐの部屋で一緒に朝食を頂く。
「いただきます!」
おいしい。おいしすぎる。実弥さん、料理も上手なんだ。
それにしても、人が作ったものは、何でこんなにおいしいのだろう。
「実弥さんが作ったんですよね。すごくおいしいです。本当においしいです」
と何度もおいしいと連呼するもんだから、実弥さんに静かに食べろと怒られてしまった。
流石に朝からこれ以上怒らせたくないので、静かに食べた。顔は笑顔のままだ。
「ご馳走さまでした。本当においしかったです」
「おぅ」
「それと、私、この後ここを出ていきますね。これ以上実弥さんにご迷惑かけたくないですし」
実弥さんの顔が険しくなる。
「何か思い出したのかァ?それとも当てはあるのかァ?」
「いえ、昨日から全く変わっていません。当てはないですけど、これ以上実弥さんにご迷惑をかけるわけにはいきません。お仕事もあるでしょうし。人間、どうにか生きようとすれば、何とか生きていけるでしょう」
「いや、当てもない奴を放り出せるかァ。また遊女にでも、とか言うんだろォ」
「本当に実弥さんは優しいですねぇ。そういうところ、大好きですよ」
「何を言ってるんだァ。こっちは放り出しても構わないが、それで死なれても夢見が悪いだけだァ」
「ほら、やっぱり。優しい」
「話を聞いてるかァ。そんなことは言ってねェ」
「ふふふふふ」