第14章 お出かけの続きを
「まぁ、実弥さんに好い人がいたら、私は出ていかなきゃならないんで、私としてはちょっと考えものなんですけどね。
でも、今日みたいにこうやって、ゆっくり歩くこと位なら、たまにはいいんじゃないですか」
実弥さんのことは好きだけど、それは鬼滅の刃のキャラクターとしてだ。恋愛感情というより、目が離せないと言う親心のようなものだ。
胸がグッと締め付けられ、喉の奥が潰されたような感覚に陥る。
私は……
「それは、お前たちがむちゃくちゃしたから、こうなっただけだろうがァ!」
先ほどまでの呟きと違って、大きな声で吐き捨てられ、現実に引き戻される。
私は実弥さんが好きだ。
でも、それは、恋愛感情ではない。色恋ではないのだ。家族愛のようなものだ。
そう自分を納得させる。
「じゃあ、それもきっかけの一つですね。実弥さんは優しいから、自分のことは後回しでしょ。私が無茶したら、実弥さんも振り回されるから結果的にはいいのかもしれないですね。
じゃあ、やっぱり一緒に隣町に連れてってくださいよ。お屋敷のこと頑張ってするので、ご褒美ください。一人じゃ行けないんですから」
「また甘露寺と行けばいいだろうがァ」
「蜜璃ちゃんとも行きたいけど、実弥さんと行きたいんですよ。それに、今回かなり記憶に捕らわれてしまったので、ちょっと心配もあって…だから、実弥さんと行きたいなぁって。さすがにお館さまとかあまねさまには、一緒に…とは言えませんし。ね!お願いします」
「……考えとく」
「ありがとうございます。今日からまたがんばれます」
その後も屋敷につくまで話をした。ほとんどが私が話したけど、実弥さんは嫌がらずに聞いてくれた。
口では聞かないとか言うけど、ちゃんと聞いてくれてるし、相槌やたまに問いかければちゃんと答えてくれる。
こんなに穏やかな時間を過ごしたのは、ここに来て初めてじゃないだろうか。
場所が違うだけで、こんなにも気持ちも変わる。