第14章 お出かけの続きを
「私、四十の記憶があって子どもがいるんですよ。こんななりですけど、気持ちは四十なんです。正直に言うと、今日はサムに会ってまた気持ちが戻ってて。
だって、実弥さんが子どもでもいいくらいなんですよ、四十なら」
「お前は俺の母親じゃねぇだろォが」
「そうなんですけど。でも、子を持つ母親の気持ちは分かりますよ。子どもには手放しで幸せになって欲しいし、そのためなら自分のことは後回しにしてでもやるし、そのためには何でもしますよ。実弥さんのお母さんもそうじゃなかったですか?自分のことを構うより、子どものためにいつもしてませんでしたか?
多分大多数の母親は、そうなんじゃないかなって思うんですよ。だからこそ、実弥さんにも幸せになって欲しいと思うし」
「俺はただ醜い鬼を殲滅させるだけだァ」
ボソッと呟くように、吐き捨てる。
あぁ、実弥さんの気持ちはやっぱり一朝一夕には変わることはない。でも少しは分かって欲しい。
親は子どもの幸せを願うことを…。
そう思い、話を続ける。
「実弥さんが、何で鬼殺隊に入ったのか、分かりませんけど。でも、とっても強い気持ちで挑んでるし、それが実弥さんの生活そのものだってのも、一緒に暮らしてて分かりますけど。
やっぱり親としては、それなりに、自分の時間も過ごして欲しいなぁと思うんですよ。実際、誰も何も言わないですよ。実弥さんの年齢位なら、素敵な女性とお付き合いするとか、ね」
「興味ねぇ」
ボソッと呟くように、また吐き捨てられる。
女性に興味はなさそうなのは分かってた。女性どころか、人への興味すらないのかと思うくらい、普段屋敷にいると誰とも関わることはない。
好い人が早く見つかればいいと思う反面、そんな女性は現れて欲しくない。そんな矛盾した気持ちが、沸き上がる。
せめて無惨を倒すまでは、現れないで欲しい。
そう思うのは、私が実弥さんの屋敷を出なければならなくなるからだ。
そう自分に言い聞かせる。