第14章 お出かけの続きを
涙を拭き、振り向けば、実弥さんの背中は少しずつ小さくなっていく。小走りで実弥さんの横まで行き、並んで歩く。
顔を上げ前を見れば、豊かな自然と、綺麗な青空が広がっている。
平和だ。
日が落ちて夜になるのも、あと数時間だ。夜になれば、実弥さんは鬼狩りに行く。今のこの穏やかな時間とのギャップに胸が締め付けられるようだ。
実弥さんには、もっと、こんな時間を過ごして貰いたい。稽古は大切だけど、少しは鬼狩りから離れている時間もあっていいと思う。
「ねぇ、実弥さん。こうやって、ゆっくり歩きながら話すのも楽しいですね。最近こんなにゆっくり歩くことって、ありました?」
「いや、ねぇなァ」
「それはそうと、今度は一緒に隣町に行きましょうよ」
「はァッ?!何で俺がッ、お前と一緒に行かなきゃならないッ?話が変わりすぎだッ!」
実弥さんへの突然のお願いは、やはり唐突過ぎたようだ。でも、正直、実弥さんともお出かけしたいという気持ちが起こる。こんな穏やかな時間を一緒に過ごしていると、尚更だ。
「だって今日楽しかったし。それより何より、実弥さんとこうやって、一緒に歩くのがすごく新鮮で、嬉しくって。こうやってると、鬼がいるなんて信じられないなぁって、思いませんか?」
「まぁ、今は昼間だしなァ」
「実弥さんは、いつも鬼殺のことばっかりでしょ?たまには、ただの不死川実弥でいる時間を持っても、バチは当たらないと思いますよ」
「……」
チラッと実弥さんを見るが、前を向いたままで表情までは伺い知れない。
返事もないので、話を続ける。
「それに、何気ない日常を過ごした時間も、実弥さんの強さになると思いますよ。何事も息抜きが大事です。いっつもそんなに眉間に皺寄せて、目をつり上げてたら、疲れちゃいますよ。
鬼殺隊だと風柱で、仕方ないかもしれないけど、たまにはこんな時間もあっていいと思いますけどね」
「そんな時間はいらねぇ」
即答だ。だけど、私がそう思う気持ちも少しは分かって欲しい。
「そうですか?実弥さんのお母さんも、そう思ってると思いますよ」
「アアッ!何でお袋なんだよッ!」
そう言う実弥さんは、これ以上はならない位、眉間の皺を寄せている。