第14章 お出かけの続きを
「…甘露寺だって、友達なんだろォ。必要とされてるんじゃねぇかァ。違うかァ」
「…そうですね。うん。そうです。蜜璃ちゃんとは友達ですもん。少しでも実弥さんのお役にも立ててるなら、私、ここにいる意味が少しはありますよね」
「だから、必要ないとか言うなァ!それと少しは拭けよ」
そう言いながら、実弥さんの右手が私の頬を撫でる。
それで気づく。涙が出てた。
いつから出始めたのか分からない程、自然に流れ出ていた涙は、ボタボタと言う効果音が似合う。あれだけ泣かないようにとしていたのに…。堰を切ったようにとは、よく言うもんだ。一度流れ出ると、あとは私の目から勝手にこぼれ落ちている。
「ごめんなさい。今日は一回涙が出たので、勝手に出ちゃってます。大丈夫。弱気で泣いてる私は、今だけですから。すぐにいつもの馬鹿な私に戻りますから」
すぐに後ろを向き、涙を拭く。まだもう少し出そうだ。
「自分で言うかァ。まぁ、お前がいつものお前じゃないと、何か調子が狂う」
「ふふ。実弥さん、やっぱり優しいですね。私、もっともっと実弥さんのために、役に立てるようにがんばりますね」
後ろを向いたまま、何度も涙を拭いながら、話し続ける。実弥さんも立ち止まり、話に付き合ってくれる。言葉は乱暴だけど、ちゃんと考えてくれて話してくれているのだ。
私の気持ちを言葉にするが、なかなか伝わらないものだ。
「俺は優しくねェッ!俺のためにってのも、よくわかんねぇし。お前はお前でいいんだよ。記憶も無理に閉じ込めんなァ。今日みたいになったら、結局手を煩わせるんだからなァ。何かあったら、溜める前に話せ。分かったな」
ほら。やっぱり優しい。
「ありがとうございます。時々話を聞いて貰えるって分かってるだけでも、すごく安心しますね。でも、やっぱり、今の私ができることは、実弥さんが気持ちよく生活して貰うことくらいですもん。だから、がんばりますね」
「聞いちゃいねぇ。勝手にしろォ」
「はいッ!」
実弥さんはもうこっちを向くことなく、歩き続ける。少しだけ、歩く速さが遅くなっている。私に合わせてくれているのだろう。
ほら。こんな所がやっぱり優しいのだ。