第14章 お出かけの続きを
【実弥side】
なぜ西瓜を貰うことになったのか。
サムとか言う外国人の迷子のお礼だと言う。金を貰っとけばこんなことにはならなかったのに…お金のためにはしてないと言う。そうだろうが、これだけの西瓜を貰ってどうするつもりだァ、こいつらは。
だがそれだけでなく、話を聞いて欲しいとノブは言う。記憶に関する話だ。流石に甘露寺には言えねぇなァ。仕方ないから、聞いてやることにした。
こんなことでお館さまの手を煩わせる訳にもいかねぇしなァ。
甘露寺が言ってたように、確かにノブはおかしかった。
話を聞いて、再認識した。
ノブは、未来の記憶しかない。
普段生活している時には、記憶の話をすることはない。屋敷での生活に馴染んでいるから、忘れていた。
だけど実際は、この未来の記憶は、こいつのことをがんじがらめにしていて、今日みたいな瞬間、ギュッと縛っているんだろう。
捕らわれる…と本人は言うが、普段は全くそんな様子はないから、本当にそんな感じなのだろう。
サムのこと、子どものことを話すノブは、いつもの間抜けな顔じゃなかった。
悲しみと辛さが全身から溢れているようで、俺にもその感情が伝わってくる程だった。
無意識に右手をノブの方に伸ばそうとしたところで、西瓜に阻まれ、現実に引き戻される。
…俺は今、何をしようとしてたんだァ。
急いでノブを見れば、全く気づくことなく話を続けている。
町での話から、話が変わった。
話し始めた内容は、いつもの馬鹿で明るいあいつからは考えられないような話だった。
ノブもこんなことを考えるんだな。
ただの馬鹿じゃなかったようだ。
だが、話の内容はどんどんと重くなっていく。
たかだかこんな事くらいで、ここまで考えるのは、記憶に捕らわれてしまっているから、かもしれないなァ。
ノブの事を見ながら、話を聞く。
「……この世界で、誰からも必要とされてないし、私はここで必要じゃないのかなぁって…」
それを言った瞬間、ノブの体がはボンヤリと光り、あろうことか、手がうっすらと消えかかっていた。
流石の俺も、その光景に驚いた。