第14章 お出かけの続きを
【実弥side】
「…ハァッ」
嵐が去り、溜め息をつく。
甘露寺の怒涛の喋りにやや圧倒された。甘露寺の奴、全く人の話を聞かねェ。何で俺がノブの迎えに行かなきゃならねぇんだァッ!
だが甘露寺の話に引っ掛かる所もあった。
一つはお館さまの所に行くこと。ノブを置いてまで、急がなきゃいけないのか。
もう一つはノブの様子がおかしいこと。あれだけ楽しみにしていた奴が、心ここに非ずになるだろうか。
甘露寺に言われて行くのも癪に障るが、お館さまの名前が出てたしなァ。それにあいつを一人にしたら、絶対迷子だァ。結局探さないといけなくなるのが、目に見えてる。
気乗りは全くしねぇが、仕方がない。甘露寺に言われたから行くんじゃねェ。後から迷子になったあいつを探さないといけなくなるのが、面倒だからだァ!
そう考えながら、屋敷を出る。
何であいつらに振り回されなきゃいけねぇんだァ。
イライラしながら走り始める。隣町まではほぼ一本道だ。ただ、一ヶ所だけ、隣町からの帰り道だと、二手に別れる所がある。間違えるとしたらあそこだろう。
町中を通り過ぎた所で、速さをあげる。ノブが迷ってなければ、すぐに見つかるだろう。
何で俺が…何度も頭の中で繰り返す。その度に苛立ちが募っていく。その苛立ちを発散させるように、足に力を込めれば、どんどん速さは上がっていく。
五分程走れば、二手に別れる場所が見えた。一人、そこで立っている奴がいる。
ノブだな。
思っていたより利口だった。口元が緩むのが分かる。
姿が見えてから、そこへたどり着くまでは、あっという間だ。目の前にたどり着いた時のノブの顔は、面白かった。
俺が来たことに驚いて、間抜けな顔が更に間抜けだった。
その顔が本当に間抜け過ぎて、笑ってしまいそうだったが、そこはきっちり隠して、怒鳴りあげる。